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日本人投手はWBC本番前に確認を!
“砂で揉んだ”滑るボールに要注意。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2013/01/06 08:02
2009年、オリオールズに移籍し、メジャーのマウンドに立った上原浩治。MLBのボールに戸惑いながらも、速球と落差のあるフォークを武器にセットアッパーとして活躍を見せている。
日本では「もみ砂」と呼ばれ、2種類をブレンドして使用。
日本では、この「特殊な砂」は、もみ砂と呼ばれ、京都・網野町琴引浜の通称「鳴き砂」と呼ばれる砂と鹿児島県の火山灰を含んだ黒土をブレンドしたものが使用される。試合前にホームチームの用具係が、この砂を使ってボールを揉んで審判員に渡す。一方、メジャーでは1950年代からこの「デラウエア川の川砂」が使用される決まりとなっていて、試合前に審判員が自分で揉んで確認することになっている。
そしてこの「デラウエア川の川砂」がやっかいなのである。
日本のように粒子の大きい砂で揉めば、パラパラと砂は落ちてボールに残らないが、「デラウエア川の川砂」は粒子が細かく、ほぼ泥に近いものなのだ。それをメジャーでは審判員が自分の唾と一緒に掌につけて揉む。泥状の砂はボールの表面に付着したままとなって、それが多いと逆にボールは滑り易くなってしまうのだ。
上原の場合はフォークが武器で、ボールの縫い目に指をかけるのではなく、ボールの皮の部分を挟んで投げるため、余計に残った泥によって滑った。
「あまりに滑るもんだから、途中から逆にそれを利用して滑らせて投げた」
このときの上原は、技でピンチを凌いで切り抜けたわけである。
メジャー球への適応能力は、最終的な代表選考の大きなカギとなる。
さて、ここからが本題だ。
ワールド・ベースボール・クラシックの代表候補選手に、大会で使用されるメジャー球が配布された。投手には1ダース、打者にも各6個の新品のボールが届き、そのボールを使ってオフの間に感触に慣れてもらおうという狙いだ。
以前にもこのコラムでボール問題に関しては書いた。前回大会では西武の岸孝之投手がメジャー球だとカーブが思うように制球できず、曲がりも悪いために最終的に代表から外れた前例もある。投手のメジャー球への適応能力は、最終的な代表選考の大きなカギとなるのは間違いないのである。
「自分の状態がまだまだなので測ることができないけど、感触は悪くない」(楽天・田中将大投手)
「変化球は滑る感じがする」(巨人・山口鉄也投手)
「(日本の統一球とは)まったく違う。作りが雑というかゴワゴワしている」(広島・前田健太投手)