プロ野球亭日乗BACK NUMBER
なぜ統一球でキューバと戦った?
WBC本番に不安を残した2連勝。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/19 11:40
第1戦で先発したソフトバンクの大隣憲司。2回を3奪三振の無失点で抑える完璧なピッチング。「自分らしい投球ができました。(WBC本番に)アピールできたと自分の中では思っています」とコメント。
確かに収穫はあった。
山本浩二新監督が指揮する日本代表が、キューバを迎えて行った「侍ジャパンマッチ2012」は、日本代表の2連勝で幕を閉じた。
相手のキューバはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)第1回大会では決勝を戦い、前回の第2回大会でも決勝リーグ入りをかけて激闘を繰り広げた相手だ。国際大会において、日本にとっては韓国とともに因縁深いライバルチームの一つである。
しかも来年3月の第3回WBCでも、第1ラウンドから日本と同じプールAに所属し、第2ラウンドそして米国での決勝ラウンドと勝ち進んでいくためには、どうしても倒さなければならない相手となる。
そのライバルに連勝したことは、まず山本新監督の下でスタートを切った新生侍ジャパンにとっては、喜ぶべき船出だったといえるだろう。
野手に関してはキューバ戦で収穫アリ。では投手陣はどうだったか?
一方、内側に目を転ずると、今回の侍ジャパンは若手中心のメンバーで、来年3月に行われる本大会の正式代表入りを目指したサバイバル戦とも位置づけられた戦いだった。
その中で、野手陣では期待通りの働きを見せた巨人の長野久義外野手、坂本勇人内野手のコンビに加え、第2戦で4番を任された日本ハムの糸井嘉男外野手らが正式メンバー当確の働きをみせた。また中日・大島洋平外野手、ロッテ・角中勝也外野手に広島・堂林翔太内野手あたりも、持ち味を発揮して代表入りへと猛アピールをみせた。
一方の投手陣も登録された13投手のうち、肩痛の日本ハム・斎藤佑樹投手以外の12投手がマウンドに上がり、結果的には第2戦で西武・涌井秀章投手が打たれたソロアーチによる1失点だけ。
相手のキューバ打線は11月23日の国内リーグ開幕を前に、「日本で言えば3月初旬ぐらいの調整段階」(西山一宇スコアラー)というのはあったかもしれない。それでも、日本の投手陣が低めに変化球を集めてゴロを打たせるピッチングをすれば、本戦でもある程度、キューバの強力打線を抑えることができることなどを再確認できたのも収穫だった。
「2試合とも無四球だと思うが、ストライクを先行させたのが良かった」
この内容に山本監督も、試合後は満足そうな表情を見せている。
ただ、である。
投手陣のこの結果に関しては、手放しでは喜べない事情があることも指摘しておかなければならないだろう。
理由はボールだった。