プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本人投手はWBC本番前に確認を!
“砂で揉んだ”滑るボールに要注意。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2013/01/06 08:02
2009年、オリオールズに移籍し、メジャーのマウンドに立った上原浩治。MLBのボールに戸惑いながらも、速球と落差のあるフォークを武器にセットアッパーとして活躍を見せている。
巨人からボルチモア・オリオールズに移籍した上原浩治投手(現ボストン・レッドソックス)のメジャー初マウンドは、2009年の4月8日(日本時間9日)、オリオールズの本拠地、カムデンヤーズ球場で行なわれたニューヨーク・ヤンキース戦だった。
この試合に先発した上原は5回86球を投げ、被安打5、1失点で勝利投手となった。当時、ヤンキースに所属していた松井秀喜外野手との“元チームメイト対決”も、3打数無安打。最後は5回にその松井を左飛に打ち取り、勝利投手の権利を手にマウンドを降りている。
試合が終わって、ロッカールームで上原に会った瞬間、メジャー初登板初勝利の喜びは、上気した顔から十二分に伝わってきた。ところが、最初に飛び出した言葉は、何とも予想外のものだったのだ。
「ホンマ、焦ったわ! ボールがツルツルで滑って、まったく指にかからんかった。何であんなもん塗るねん!」
「あんなもん」の正体は、「デラウエア川の川砂」。
メジャーのボールが滑る、というのはキャンプから百も承知のはずだった。それに対して自分なりに工夫もして対策はバッチリ立ててマウンドに上がったはずでもある。ところがマウンドで上原が触ったボールは、これまでとはまったく違う感触の、今まで以上にツルツルとしたものだったという。
その秘密が、上原の「何であんなもん塗るねん!」という言葉にあるわけだ。
「あんなもん」の正体とは、試合前に審判員が使用球をこねるときに使う「デラウエア川の川砂」だった。
実はあまり知られていないが、プロ野球で使用されるボールは、新品をおろして、そのまま試合球として使うわけではない。
公認野球規則3・01では、「試合の準備」として、以下のように定められている。
(C)正規のボール(リーグ会長がホームクラブに対して、その個数および製品について証明済みのもの)を、ホームクラブから受け取る。審判員はボールを検査し、ボールの光沢を消すため特殊な砂を用いて適度にこねられていることを確認する。(以下略)
ここでいうボールの光沢とは、皮をなめすときの油や糸についている蝋のことで、これを「特殊な砂」を使って揉んで、取り除いて使うという決まりになっているわけだ。