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ブンデスでも代表でも稀有な存在!?
岡崎慎司、その強烈な個性の正体。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2012/11/25 08:02

ブンデスでも代表でも稀有な存在!?岡崎慎司、その強烈な個性の正体。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

シュツットガルト移籍3シーズン目となる今季。9月末に左足親指を痛め戦列を離れたが、10月末には実戦に復帰。徐々に出場機会を増やしている。

ドイツに住む友人の話と岡崎から聞いた話の符合。

 オマーン戦後、岡崎はあのゴールをこう振り返った。

「高徳のいい仕掛けからチャンスが生まれて、中でヤットさんが触ると思っていたので、それを見て入っていきました。今まで行ききれていなかったところに入っていけたし、感覚が戻ってきましたね」

 あのゴールは生まれるべくして生まれたゴールであり、岡崎だからこそ奪えたゴールだった。

 福西氏との会話を通じて思い出したのは、1カ月前に交わしたドイツに住む友人の話、それからその直後に聞いた岡崎の話だった。

ドイツ人は本当に「マジメで、几帳面で、時間に正確」なのか?

 10月のドイツ取材遠征の半ば、仕事の息抜きも兼ねてハンブルクに住む友人宅を訪ねた。とある日本企業に勤務する彼は、10年春にそのドイツ支社に“移籍”。ドイツ人が14人、日本人は彼1人という計15人のプロジェクトチームに所属し、日本と欧州各国間の“調整役”としてドイツで奮闘している。

 そんな彼とハンブルガーSV対シュツットガルトの一戦を観戦した後、ビールを片手に約30分の道のりを徒歩で帰った。道すがら、思い出話やお互いの仕事について話す中で彼はこう言った。

「ドイツ人って、日本人と似ているとよく言われるでしょ。マジメで、几帳面で、協調性があって、時間に正確だって。でも、実際はそうでもない。電車は平気で遅れるし、いわゆる欧米人気質で個が強すぎるわけ。だから、バランスを取って組織として機能させるのって、マジで難しいよ。業務上の“ポテンヒット”みたいなのを打たれること、結構あるから(笑)。オレはそういう組織の“隙”を埋める役目なんだけど、『もしかすると、自分が日本人だから気づくのかな』と思うことがたくさんある」

 さらにこう続ける。

「こっちに来てるサッカー選手って、きっと同じような感覚で苦労してるんじゃないの?」

囲み取材の後にもう一度呼び止め、「バランス」について聞く。

 それから4日後の10月25日、ヨーロッパリーグのコペンハーゲン戦を取材するため、シュツットガルトに向かった。試合は0-0のスコアレスドロー。この日の岡崎は左足親指の故障から復帰して62分に途中出場を果たし、約1カ月ぶりにピッチに立った。試合終了後の取材エリアで、数人の記者が彼を囲む。

「ピッチにいる自分たちで考えてどうするか。そういうところは、もう少し成長しなくちゃいけないかなと思いますね。今、どこのバランスが崩れていて、どこに人がいないかとか。今日みたいに、カウンターを受けたら危ないのに、前に行こうとしている時間帯もある。そういうところで、もっと大人にならないといけないかなと」

 囲み取材が散会した後でもう一度呼び止めた。「バランス」という言葉を聞いて、4日前に友人と交わした会話を思い出したのである。

【次ページ】 バランスが崩れるのを気にするのは「日本人だから」?

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