欧州サムライ戦記BACK NUMBER
ブンデスでも代表でも稀有な存在!?
岡崎慎司、その強烈な個性の正体。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byBongarts/Getty Images
posted2012/11/25 08:02
シュツットガルト移籍3シーズン目となる今季。9月末に左足親指を痛め戦列を離れたが、10月末には実戦に復帰。徐々に出場機会を増やしている。
バランスが崩れるのを気にするのは「日本人だから」?
――「バランスの崩れ」について、もう少し詳しく状況を教えてもらえますか?
「バランスが崩れること自体は、絶対にあることですよね。点を取るために前に出れば崩れる。ただ、ウチのチームはまだ、それを分かった上でバランスを崩しているわけじゃないんですよ。『点取らなアカン』みたいな意識で、フラっと上がってしまう選手もいるので」
――崩れることを意識しないまま、無意識のうちに崩してしまう。
「そうです。本来のバランスって、やっぱりスタートのポジションをある程度守ることで保たれると思うんですよね。だから、たとえバランスを崩しても、決められたポジションに戻らないといけない。そこまでをきっちりやるっていうのがバランスを取るってことだと思う。でも、チームが悪い時っていうのは、それがないんですよね。バランスが崩れたまま10分くらい平気で過ぎてしまうことがあるんですけど、それはやっぱり、一番怖いですよ」
――調子が上がらないチームが陥りやすい状態というか、そういう状況にあると調子が上がらないというか。
「そうなんです。そこをみんな、あまり気にしてない。でも、僕は気になる。ただ、それはもしかしたら、僕が日本人だからかもしれないですけどね」
「仮に僕が気を遣える選手だとしたら、それをやったほうがいい」
その言葉を聞いて、思わず「やっぱり!」と声を上げてしまった。前述の友人の予想どおり、岡崎も日本人としての自分、ポテンヒットを打たれまいとしてバランスを考慮する日本人のメンタリティーを痛感しているらしい。しかし面白かったのは、彼がそのことをポジティブに解釈していることだった。
――実は、こっちで働く友人が全く同じことを言っていました。
「やっぱり、そういうもんなんですか(笑)。バランスが崩れたら『ヤバい』と思うのは、たぶん僕らが日本人だからなんですよね。だからまあ、いろんなところに気を遣うというのはしょうがないかなと。でも、今の状況でそれができるのが自分だけだったら、そういうところで頑張らないと」
――自分が日本人だから感じることって、普段からありますか?
「それはもう、たくさんありますよ。文化の違いだと思いますけど、一つひとつのボールのもらい方にしても、日本人の気の遣い方ってありますよね。こっちだと、気を遣いすぎていると思われるかもしれない」
――例えば、ピッチの中ではどんなことが?
「サイドバックがボールを持った時に、僕らの感覚からすると、ボランチが真横にいてサポートすることが普通じゃないですか。でも、このチームの場合はそれが普通じゃない」
――確かに、それは今日の試合を観て感じました。
「ただ、こっちでも強いチームはちゃんとやってるんですよね。バイエルンと試合した時に、『ああ、やっぱり普通はこうだよな』って思いましたもん(笑)。まあ、ないものねだりをしても仕方ないし、どっちがいいってことでもないんですけど、僕はこのチームの一員としてやるべきことをやらないといけない。だから、仮に僕が気を遣える選手だとしたら、それをやったほうがいいということなんですよね。もちろん、そういう感覚は日本代表でも必要だと思います。だから、その上で個人としての力を発揮できるような、チームを勝たせられる選手になりたいと思いながらやってます」