欧州サムライ戦記BACK NUMBER
ブンデスでも代表でも稀有な存在!?
岡崎慎司、その強烈な個性の正体。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byBongarts/Getty Images
posted2012/11/25 08:02
シュツットガルト移籍3シーズン目となる今季。9月末に左足親指を痛め戦列を離れたが、10月末には実戦に復帰。徐々に出場機会を増やしている。
岡崎が考える「最もうまい11人が試合に出る」の意味。
それから会話は、10日ほど前に行なわれた日本代表の欧州遠征に及んだ。周知のとおり、岡崎は故障でこの遠征に参加していない。
「ハイライトを観て、選手のコメントをチェックして、それで僕自身もブラジルに負けた気になってます(笑)。やっぱり、最終的には個の能力で勝たないと、本番でブラジルに勝つことは難しいと思う。ただ、今の可能性が20%とか30%だとしたら、日本人はそれを上げられるだけの可能性を秘めていると思うんですよね」
本番でブラジルに勝つ可能性を引き上げる――。
この命題のヒントとなるのが、ドイツ人気質と日本人気質の融合である。つまり、際立つ個の能力を持ちながら、ボランチの選手が自然な動きでサイドバックをサポートするバイエルンのようなチームを作ればいい。
「結局、チームの中で最もうまい11人が試合に出ると思うんですよ。でも、“うまい”にもいろんな種類があって、裏に抜けるとか、足下が巧いとか、パスをさばけるとか、バランスの取り方が絶妙とか……いろんなもんがあるけど、試合に出るのは、それを全部掛け合わせて、試合に勝つために行動できる11人。自分がその一人であるためには、チームを勝たせられるような能力が必要であるということなのかなと」
最後の最後に“個”を発揮した結果生まれたオマーン戦のゴール。
日本代表はもちろん日本人選手の集合であるから、隣にいる選手をサポートする動きはある程度自然にできる。あとはそれぞれが、絶妙なバランスの上で輝く“個”の力を磨けばいい。
岡崎にとっての“個”とは、もちろん相手最終ラインの背後を突く「裏への飛び出し」である。大きく分類すればテクニシャンが何人もいる今の日本代表において、彼の個性は異質だ。
「もちろんそれを武器にしたいですよ。でも、だからと言って“裏”一辺倒じゃない。足下でもらったらきっちりつなぐ、キープもする、仕掛けもする。まずはそれがないと、チームとして機能しませんから。でも、僕が常に狙っているのは裏。なぜかと言うと、裏っていうのが、最もゴールにつながりやすいということを知っているからなんです」
オマーン戦で奪った決勝ゴールは、それまで前線でバランサーに徹していた岡崎が、最後に“個”を発揮した結果として生まれた。それこそまさに、彼が目指すところの「チームを勝たせられるような能力」に他ならない。
決して技巧派と呼べる選手ではない。しかし岡崎には、他の誰も持っていない強烈な個性がある。だからザッケローニも、「最もうまい11人」のうちの一人として彼をピッチに送り続けているのである。