野ボール横丁BACK NUMBER
DH無き敵地で沈黙する日ハム打線。
札幌で「つなぐ野球」は蘇るか?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/10/29 11:20
シリーズ前は「打席に立つことがあれば、バントはきっちり決めたいと思います」と語っていた武田。試合前にやっているバッティング練習は、果たして報われるか?
吉川光夫も武田勝もバットに当てることさえできない。
2回表は、2死三塁で9番・武田に回り、見逃し三振。5回表は、4回裏に相手の4番・阿部慎之助を三振に切って勢いに乗りたいところだったのだが、8番からの打順で、9番・武田は再びあっさりと見逃し三振している。
7回表は、6回裏に武田がピンチを3者連続三振で切り抜けて盛り上がった直後だったのだが、6番からの打順だったため、チャンスをつくっても9番まで回ることを考えると、この回もだめかなという負の雰囲気が漂ってしまう。
ちなみに第1戦、投手としては唯一、打席に立った先発投手の吉川光夫も、あっさりと見逃し三振に倒れている。
日本ハムの投手陣は、打つ以前に、バットに当てることさえままならないのだ。
いや、もっと言えば、手を出すことさえできない。
「つなぐ打線」に致命的な分断現象が起こってしまうという悲劇。
実は、今季の交流戦、DH制が採用されないビジターゲーム12試合において、日本ハム投手陣は、通算で計1安打しか打てなかった。
その「分断現象」は、得点力に如実に表れている。DH制があるときの平均得点は約3.8点であったのに対し、ないときは約2.8点まで落ちた。
もちろん条件は巨人も同じだが、ここに普段からDH制を前提にチーム作りをしているパ・リーグのチームと、そうではないチームの違いがある。しかも、今季の日本ハムは、例年以上に打線のつながりに対する意識が高い。ところが、どうしたって9番で途切れてしまうという雑念があるせいか、いつものように小さな波が次から次へと押し寄せる内に大きなうねりを生むような「グルーヴ感」がないのだ。