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大谷翔平はメジャーか日本ハムか?
日米の選手育成法の違いを検証する。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/10/29 10:30
「すごく評価して頂いたのは、すごく有難いなと思っています。ですがこの間、決断した通り、自分のアメリカでやりたいという気持ちは変わらないです」とドラフト後にコメントした大谷。
アメリカ挑戦を表明した花巻東高の大谷翔平だったが、北海道日本ハムの栗山監督が、
「大谷君には本当に申し訳ないけど、指名させてもらう」
とドラフト前日に発表、日本ハムが来年3月末日までの独占交渉権を手に入れた。
もちろん、日本の球団にも指名する権利があるわけだから、日本ハムはひとつの見識を示したということだろう。ただし、2年連続してドラフト1位指名の選手を逃すリスクを負ったことになるが……。
果たして大谷の進路が日米どちらになるのか、交渉の行方が注目されるのだが、今回は、
「日本とアメリカ、育成方法にどんな違いがあるの?」
という多くの疑問について答えていきたいと思う。
日本では、高卒ルーキーであっても、実力さえ身につけば1年目から一軍で先発を任される。
しかし、アメリカではそんなことはあり得ないと断言できる。アメリカのマイナーのシステムは、どうなっているのか。ある選手を例にとってみて紹介してみよう。
アメリカで高卒即入団した選手の育成例を見てみよう!
今季、レイズの先発ローテーション入りした高卒のマット・ムーアを例にとって考えてみよう。
ムーアは2007年のドラフト8巡目で指名された選手。即座に契約して、2007年から2008年まではルーキーリーグでプレーしている。
2009年にシングルAのロウアー、下部レベルでプレーして26試合に先発し、8勝5敗の成績を残す。ここでアメリカ流のローテーションに慣れていくわけだ。
ちなみにこの年の投球回数は123回。若者には決して無理をさせず、徐々にイニングを増やしていくのがアメリカ流の育成方針だ。なぜなら、選手は球団の財産だからだ。
この年の活躍が評価され、2010年にはシングルAのハイアー、上部リーグのシャーロットに昇格。ここでは6勝11敗の成績だったが、26試合を投げてローテーションをしっかりと守り、145イニングを投げた。アメリカの考え方としては、投球回数は多くて前年の20%増しが妥当なラインと見なしている。それを越えると翌年に故障が発生しやすくなると分析されているからだ。