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夏の甲子園、投打の傾向を徹底分析。
1番打者のスタイルはなぜ変わった!?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/30 10:31
3回戦の神村学園(鹿児島)戦。試合開始のサイレンが鳴り響く中、140kmのストレートを叩いて先頭打者ホームランを放った光星学院の天久翔斗。試合前、「プレーボール本塁打を打ちたい。積極的に振る」と話していた。
今大会、通算56本塁打は'06年の60本に次ぐ、歴代2位の多さだった。その原因は大会中盤から後半にかけて強く吹いた浜風、さらに各打者の早いカウントから打って行く積極的なバッティングによるところが大きいが、よりシンプルに考えれば打者の実力が投手を上回ったということだろう。大会通算打率.270に対して大会通算防御率は3.45。明らかに打者が打ち勝った現実が見えてくる。
「早いカウントから打って行く」という部分に光を当てると、ファーストストライクを打ってホームランにしている回数は2011年の10回(全本塁打の37パーセント)にくらべ、今大会は30回(54パーセント)に増え、“好球必打”の思想が選手に染み込んでいるのがわかる。
ここでチーム打率10傑(通算20安打以上)の学校を率いる監督の顔ぶれを見ながら、考えを次のステップに進めていこう。
浦和学院 .361 森士 48歳
宇部鴻城 .360 尾崎公彦 42歳
作新学院 .358 小針崇宏 29歳
龍谷大平安 .351 原田英彦 52歳
仙台育英 .333 佐々木順一朗 52歳
東海大甲府 .320 村中秀人 53歳
佐世保実 .317 清水央彦 41歳
倉敷商 .310 森光淳郎 42歳
大阪桐蔭 .295 西谷浩一 42歳
常総学院 .290 佐々木力 46歳
若い監督の増加が劇的なホームラン増の背景に?
各校の監督10人中、50歳を超えているのは3人である。49校監督の平均年齢は47.2歳なので、平均年齢以上は3人に森監督を加えた4人ということになる。監督が若返っている。そういう若い監督が積極的に打って行く有効性を選手に伝えている、というのが劇的にホームラン数が増えた背景にあると思う。
次に紹介する選手たちはいずれも1番打者で、1回表・裏に先頭打者として打席に立ち、いきなりホームランを打っている。ボールカウントとともにその顔ぶれを見ていこう。
8/12 井澤凌一朗(龍谷大平安) 1(ボール)-0(ストライク)(2球目)
8/18 天久翔斗(光星学院) 初球
藤井勝利(倉敷商) 3-2(6球目)……初球だけ見逃し
8/19 鈴木拓夢(桐光学園) 2-1(4球目)
8/20 森友哉(大阪桐蔭) 1-0(2球目)