オフサイド・トリップBACK NUMBER
このクラシコで雌雄を決することに!?
モウリーニョが迫られる究極の選択。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/21 08:01
2012年夏の監督人事でも、すでに台風の目になりつつあるジョゼ・モウリーニョ。そして、自らの意思で毎年1年契約しか結ばないジョゼップ・グアルディオラも、移籍の噂が絶えない。今季、もっとも重要かもしれないクラシコの行方は、このふたりの来季への試金石となる。
レアルの転換点は、大敗を喫した最初のクラシコだった。
事実、モウリーニョ率いる新生レアルは、シーズン当初こそ地味な試合をしていたものの徐々にゴールを量産するチームになっていく。10月のデポル戦(6-1)とラシン戦(6-1)、11月20日のビルバオ戦(5-1)などは最たるもので、モウリーニョはバルサを抑えてリーガの首位にも立っていた。
ところが、そこでクラシコがやってくる。2010年11月29日、カンプノウに乗り込んだレアルはバルサに真っ向勝負をしかけ0-5と完膚なきまでに叩きのめされてしまう。と同時にリーガの首位からも陥落し、二度と首位に返り咲くことはなかった。
この歴史的な大敗により、モウリーニョは踵を返す。むろん格下相手には大量点を奪うこともあったが、2011年に入ってのシーズン後半、4月半ばから5月頭にかけて行われた「クラシコ4連戦(リーガ、国王杯決勝、CL準決勝)」で採用されたのは、インテル時代のバルサ戦が微笑ましく思えるほど、リアリズムとニヒリズムに徹したサッカーだった。
クラシコ4連戦での守備的な戦いにはOBからも批判が集中。
実質的なディフェンスラインはピッチ中央に設定され、守備的ミッドフィルダーに起用されたペペは、バルサの選手がセンターライン附近までやって来るやいなや、荒っぽいプレーで即座に潰しにかかる。そのノリは「フットボール(サッカー)」というよりも、「アメリカン・フットボール」に近かった。
かろうじて国王杯は制したものの、この戦い方にはレアルのレジェンドであるディステファノさえもが激怒。「バルサはライオン、レアルはネズミのようだった」とモウリーニョを公然と批判する。当のモウリーニョは「私はディステファノではない。レアルの監督だ」と茶化したが、軽口はここまでだった。続いて4月27日と5月3日に行われたCLの準決勝2試合では、1敗1分けでバルサに敗退。モウリーニョは身も蓋もないサッカーをする監督というレッテルを二重、三重に貼られた上に、結果もろくに出せないという最悪の形でシーズンを終えたのである。
こと直接対決の結果に関する限り、レアルの劣勢は今シーズンも変わっていない。
8月のスーパーカップでは1敗1分、12月のリーガは1-3、1月に行われた国王杯の準々決勝でも1敗1分で苦杯を舐めたため、「さすがのモウリーニョもバルサには歯がたたない」とする見方が強くなってきている。