オフサイド・トリップBACK NUMBER
このクラシコで雌雄を決することに!?
モウリーニョが迫られる究極の選択。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/21 08:01
2012年夏の監督人事でも、すでに台風の目になりつつあるジョゼ・モウリーニョ。そして、自らの意思で毎年1年契約しか結ばないジョゼップ・グアルディオラも、移籍の噂が絶えない。今季、もっとも重要かもしれないクラシコの行方は、このふたりの来季への試金石となる。
いまやモウリーニョ政権は風前のともし火!?
加えて都合が悪いのは、そもそもレアルの監督を続ける資格があるのかという論調さえ出てきたことだ。
スーパーカップではバルサのアシスタントコーチの眼に指を入れたことが問題視されたし、国王杯の前後には求心力の喪失や、クラブ内部における反モウリーニョ派の存在も指摘された。とあるイギリスの新聞に掲載されたインタビューでは、モウリーニョのいらだちが如実に表れていた。
――なぜファンの支持を失ったんでしょうか?
「知らない。彼らに聞いてみるべきだ」
――クラブから(内部情報が)漏れている点については?
「何もわからない」
――マドリーはバルサに対して精神的に臆してしまうのでしょうか?
「選手に聞いてくれ」
――(バルサとのセカンドレグは)どんなふうに戦うつもりですか?
「ノーコメント。私は監督だし責任がある。答える理由はない」
モウリーニョが苦境に立たされていることは日本でも報じられている。今回のクラシコに対する注目度が昨シーズンほど高くないのは、おそらくこのためだろう。
昨季よりもモウリーニョ・レアルは確実に進化している。
とはいえ「モウリーニョ限界説」にばかり囚われていると、重要な事実を見逃してしまうことになる。それはモウリーニョ・レアルの進化だ。
つい見逃されがちだが、昨シーズンのリーガで一番多くゴールを決めたチームはレアルだった。しかも今シーズンのレアルは、既に昨シーズンの総得点数を上回っている。これはレアルの攻撃陣がスケールアップしたということに他ならない。
それを可能にしたのはチーム戦術の浸透であり、エジルをはじめとする昨シーズンの加入組がリーガにもようやくアジャストできたことだが、個人的にはカカが戦力として計算できるようになったことも大きいように思う。
たしかにクローズドスキルやボックス内での仕掛けの細かさでは、バルサ側に一日の長がある。また同じドリブラーといってもロナウドとメッシはタイプが違うし、基本的にカウンターや速攻主体のレアルと、チックタックと評されるバルサの攻撃の仕掛け方は異なっている。だがこれはどちらが上とか下というよりも好みの問題に近い。
また個々の試合に関しても、内容を再度検証する価値はある。たとえばクラシコの今季リーガ初戦(12月10日)は1-3で敗れたが、レアル側がしっかりとチャンスをものにしていれば、試合の展開はずいぶん違ったものになっていた可能性があった。試合へのアプローチも、クラシコ4連戦の頃に比べれば、ずいぶんまっとうになっていた。「負けはしたけれど、後ろめたい気持ちは国王杯で勝った時の方が強かった」というサポーターのコメントは本心だろう。