オフサイド・トリップBACK NUMBER
このクラシコで雌雄を決することに!?
モウリーニョが迫られる究極の選択。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/04/21 08:01
2012年夏の監督人事でも、すでに台風の目になりつつあるジョゼ・モウリーニョ。そして、自らの意思で毎年1年契約しか結ばないジョゼップ・グアルディオラも、移籍の噂が絶えない。今季、もっとも重要かもしれないクラシコの行方は、このふたりの来季への試金石となる。
レアルにしか実現できない「第3の道」を提示できるか?
モウリーニョはどんなサッカーでクラシコに臨むつもりなのか。彼の戦術に関する選択は、サッカー界の未来を左右する大問題にも関わってくる。
それは「第3の道」、すなわちバルサのコピーでもなければ、昨シーズンの国王杯決勝のようなリアリズムの極北でもない、新たな攻撃的サッカーのスタイルを見いだせるかというテーマだ。
残念ながら欧州の他のビッグネームは、少なくとも今季は新しいアイディアを提示できていない。それどころか多様性は影を潜め、いずこも似たようなサッカーをやるようになってきてしまった。この傾向はプレミアで特に顕著だ。
しかしレアルは「第3の道へのヒント」を提示できる力を秘めたチームであり続けている(4月17日に行われたCL準決勝ではバイエルンに屈したが、選手の顔ぶれという点でも監督の才という点でも、レアルがバルサに対抗できる「コンセプト」を育み得る数少ない存在であることに変わりはない。新たな攻撃のスタイルを生み出すポテンシャルという点では、むしろバイエルンなどよりドルトムントの方が有望な気がする)。
結果が重要視されるクラシコだから攻撃に徹する可能性も。
重要な岐路に立っているのは、監督としてのモウリーニョ自身も同様だ。
レアルに来てからのクラシコの通算成績は、なんと1勝5敗4分。今回は是が非でも勝たなければならない。
ただし、いかに結果が大事だといっても、国王杯決勝のやり方に戻ったのでは戦術家の名折れになってしまう。ガチガチに守備を固めて勝っても針の筵に座らせられることは目に見えているし、敗れたとなればなおさらダメージは大きくなる。
他方でモウリーニョは、“結果を重視するが故にこそ攻撃的なサッカーに望みを託す”ことも検討しなければならない。守備的な戦い方をしたとしても、今のバルサに勝てる保証はないからだ。宿敵バルサは、そこまで進化しているのである。
やはり最後は守備的なアプローチに頼るのか。
あるいは思い切って攻勢に打って出るのか。
その場合の動機は、体面の保持なのか、冷徹な計算の結果なのか。これぞまさに究極の選択。今回のケースは人物研究の素材として非常に面白い。クラシコは様々な意味で、モウリーニョにとっての「モーメント・オブ・トゥルース(真価が問われる瞬間)」になる。