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「朗希ならやりかねない。でも…」ロッテの守護神・益田直也が忘れられないあの登板…完全投球の裏で冷静に進めた準備「投げたくはなかったけど(笑)」
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梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/27 11:03

通算250セーブは目前。新シーズンに挑むロッテ・益田
歓喜の日から中6日で迎えたこの日。スタンドにはまだ完全試合の余韻が残り、怪物の豪快なピッチングを期待する空気が充満していた。しかし、さすがにパーフェクトゲームの続きを見られると想像するのは難しかったのではないだろうか。それはチームメートも同じだった。完全試合は何十年に一度、あるかないかという偉業なのだから。
「朗希ならやりかねない」
ところが、プレーボールがかかると、グラウンドでファイターズ打線は沈黙を続けていた。背番号17番のボールは前回登板をしのぐキレを見せていた。
初回を簡単に3人で抑えると、その後も凡打の山を築いた。気が付けばまた、試合中盤に入っても誰にも塁を踏ませていなかった。いつも通りマッサージを終えて5回にブルペンに入った益田は、モニターの前に置かれている古びたソファーに座り込みモニター画面を見つめた。
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「朗希ならやりかねない。しかし聞いたことがない」
益田は身震いした。ただ長年、この世界で生きてきた人間として、あえて自分は冷静であろうと一度、深呼吸をして背筋を伸ばした。
「前回は完全試合で球数は100球を超えていた。もちろん誰もしたことがない大偉業なので達成して欲しいと思っていたけど、(ベンチは)無理をさせないのではないかとも思った。何点かリードをしていたら別だけど試合は0対0。前回も完投しているわけだし、100球を超えた辺りがタイミング。行く準備を進めた」
どんな時でも「淡々と、冷静に」
あえてもう一度、書く。守護神たるものは、どんな時もブルペンでは一喜一憂せずに淡々と冷静にいる。それは長年、その持ち場をこなす中で益田が身に付けていったことでもある。
試合が後半に入ると、ストレッチやショートダッシュをこなしながら相手打順を逆算して自分が投げるであろう場面を想定していく。
「シーズン中はブルペンでいつも計算している。次の回は三者凡退、そのあと一人くらい出塁するとして、このあたりの打順と対戦するだろうなあ、とか。頭の中は、その計算ばかり。そこから色々と攻め方を考えていく」
この時も頭の中は計算を始めていた。ただ、マウンド上の圧倒的な投球から、ある覚悟もした。パーフェクトのバトンが渡されるかもしれない。三者凡退を続けて9回を迎えれば7番のレナート・ヌニエスから。続いて頭に浮かんだのは高校時代、テレビで目にした伝説の日本シリーズだった。
脳裏によぎった「伝説の継投」
「2007年の中日と日本ハムの日本シリーズはテレビで見ていました。岩瀬(仁紀)さんはどんな感じでブルペンにいたんだろう、と考えました。もちろん、あちらは日本シリーズで日本一へ王手をかけた試合ですし、1点リードの状況。一緒にしたら失礼かもしれないですけど、こういう感じだったのかなあと思いながら見ていました」