メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
メジャー複数球団、騒然「日本にそんなことをやっている施設が!」カブスとサポート契約した分析企業が「世界のどこでも勝負できる」と語るワケ
text by

間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2025/02/20 17:02

今永昇太らの活躍で注目が集まるシカゴ・カブス。サポート契約を結んだ日本企業にメジャー各球団も熱視線を送っている
「そんなことをやっている施設が日本にあるのか!」
カブスとのサポート契約やウインターミーティングへの参加で、神事氏は自身の認識が間違っていないと確信した。「日本の先達の蓄積もありバイオメカニクスは日本の方が米国よりもレベルが高いと改めて思いました」。米国にはバイオメカニストが育ちにくい環境があると指摘する。
「米国ではスポーツのパフォーマンス向上に関する研究には十分な資金が割かれておらず、この分野では日本の方が進んでいる部分もあります。しかし、多くの選手がドライブラインを訪れることから、米国がパフォーマンス向上に関する動作分析でも進んでいると見られがちです。私はそうではないと考えています。カブスとのサポート契約が、そういうところに一石を投じる形になればと思っています」
カブスに知識や技術を提供…自社へのメリットは?
ADVERTISEMENT
中尾氏も神事氏と考え方は同じ。ネクストベースの取り組みがカブスに認められた今、「どうしても様々な分野で米国はすごい、メジャーはすごいと思われがちです。ただ、日本がリードする分野があると日本の選手や球団にも知ってほしいですし、私たちは裏方として示していくつもりです」と話した。
ネクストベースにとって、カブスとのサポート契約は知識や技術を提供する形となる。ただ、自社の課題を解決するメリットもある。「研究」から「運用」へ、次のステージに上っていけるのだ。神事氏は言う。
「研究開発が〈発見〉のフェーズだとすると、それをどのように〈運用〉のフェーズに進めていくかが重要です。私たちのラボでは、個人が能力を開発し、チームに戻るというスタイルが現状の形となっています。そのため、チームとして運用する中で得られる結果にも大きな関心を持っています。
メジャーリーグの球団では、トップダウンで意思決定が行われ、そのプロセスを支えるメンバーも科学の重要性を深く理解しています。新しいことを研究するだけでなく、それを活用し、実際の運用に結びつけることが、研究者としての社会貢献につながると考えています」
どんなに優れた研究も、現場で生かされて初めて真の価値を生み出せる。その考え方こそが、経営者の中尾氏と研究者の神事氏がタッグを組んだ最大の理由でもあった。中尾氏が語る。