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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
“イチロー満票ならず”でも岩瀬仁紀の2年目選出でもなく…野球殿堂投票で一番の大問題とは「三冠王・松中信彦や小笠原道大すら消えてしまう」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/21 06:00
イチローと岩瀬仁紀が野球殿堂に選考された一方で、投票を振り返ると浮かび上がる問題とは(代表撮影)
以下は1993年:稲尾和久(94.8%)、2009年:若松勉(94.7%)、94年:王貞治(93.2%)、今年のイチロー(92.6%)と続く。2008年の山本浩二(92.5%)、1980年の大下弘(91.8%)、1964年の若林忠志(91.4%)、2018年の松井秀喜(91.3%)、1964年の中嶋治康(90.8%)、1988年の長嶋茂雄(90.1%)までが得票率90%以上だ。
イチローの92.6%は、こうした錚々たる日本野球の「偉人」に肩を並べた、という点で十分満足いくものではないかと思う。
「殿堂入り」の投票は、スターや人気者、話題性の高い選手だけを選ぶものではない。地味でも偉大な記録を残したり、野球界に長年にわたって貢献した選手を、広い視野で選出するもので、投票者には見識と視野が求められる。
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だから、投票資格がある表彰委員は「野球報道に関して15年以上の経験を持つ者」となっている。15年以上ということは、デスクなどになって、現場にはあまり出てこない人もいるかもしれないが「今」だけでなく「昔のこと」もよく知っている報道陣となる。
イチローは“誰でも投票できるはず”の一方で
敢えて極端なことを言うが、イチローに投票するのは、素人でもファンでも「誰でもできる」。今年の投票で言えば、野球取材の「プロ」「ベテラン」に求められたのは、イチロー以外の選手に「いかに目配りできるか」ではないか。
殿堂入り投票では、有権者である表彰委員は1名につき7人以内の連記となっている。要するに一人で7人まで投票することができるのだ。つまりそれだけ投票者それぞれの「独自の視線」「視野の広さ」が求められている。
同じ記者投票でも、ベストナインやゴールデングラブは少し趣旨が違う。これらの表彰は「そのシーズン、そのポジションで最も活躍した選手」「守備で最も良いパフォーマンスを見せた選手」を選出するものだ。
投票資格は「5年以上のプロ野球の取材経験がある」記者で、投票は「1ポジションにつき1人」となっている。2つの投票ではそのシーズン、最も活躍した選手に票を投じることが求められる。
だから時折見られる「規定打席未達の若手」「その年は活躍していない選手」に票が入ることに「何を考えているんだ!」と非難の声が集まるわけだが。
問題は「7票」を使い切っていない記者が多いこと
筆者が今回の殿堂入り投票で最も残念に思ったのは、得票数や選考された2人ではなく、「7票」を使い切っていない記者がかなりいたことである。