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“イチロー満票ならず”でも岩瀬仁紀の2年目選出でもなく…野球殿堂投票で一番の大問題とは「三冠王・松中信彦や小笠原道大すら消えてしまう」

posted2025/01/21 06:00

 
“イチロー満票ならず”でも岩瀬仁紀の2年目選出でもなく…野球殿堂投票で一番の大問題とは「三冠王・松中信彦や小笠原道大すら消えてしまう」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

イチローと岩瀬仁紀が野球殿堂に選考された一方で、投票を振り返ると浮かび上がる問題とは(代表撮影)

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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 2025年の野球殿堂入りについて発表で話題になったのは「イチローの殿堂入り」とその得票率だった。しかしそれ以外に……記録面から見ると大きな問題があると識者が指摘する。〈全2回の1回目〉

イチローの得票率92.6%だったが…

 イチローが、日本の野球殿堂入りした。野球殿堂入りの資格は、プレイヤー表彰の場合、現役引退して5年が経過した元選手から候補者が選ばれる。そして有効投票数の75%以上を獲得すると、殿堂入りが決まる。候補者になって15年の間に当選できないと資格を失う。

 イチローは候補になって1年目で当選。日米通算で4367安打、NPBで7年連続首位打者を獲得して、野手として初めてMLBに移籍し、アメリカでも3089安打を打ったイチローの実績を考えれば、当然だろう。

 ただ、一部にイチローが満票(今年の場合349票)ではなく、323票(得票率92.6%)だったことに「意外だ」「おかしい」という声が上がっている。

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 これは恐らくMLBの殿堂(Hall of Fame)入りの話に引っ張られたものだろう。MLBでも今年から殿堂入り候補になったイチローだが、1年目での当選は確実だとされていて、あとは「満票かどうか」が注目されている。

 過去、MLBでは2019年にヤンキースの守護神だったマリアノ・リベラがただ一人「満票」で選出されている。また翌年、同じくヤンキースのデレク・ジーターが満票に1票足りない99.7%にとどまったことが話題になっていた。リベラ、ジーターのチームメイトでもあったイチローが「満票」で当選するかどうかは大いに注目されているのだ。

 しかしNPBの殿堂入り投票では――開票前、イチローが満票かどうかはほとんど話題になっていなかった。投票結果が発表になって「イチローが満票じゃなかった」ことが、突然大きな問題であるかのように言われている。

 個人的な見解として、NPBもMLBもイチローの殿堂入り投票の「得票率」は、そこまで重要なものではないと思っている。いずれにしても1年目に、圧倒的な得票率で殿堂入りを決めたのだから、それでいいのではないかと思う。

得票率90%超、スタルヒンとイチロー以外は誰?

 そもそも、日本の野球殿堂の「競技者表彰」のうち、プレイヤー表彰で満票は出ていない。さらに実は日本の野球殿堂では、投票結果が発表されていない年、上位しか発表されていない年もある。

 完全にはわかっていないのだが——これまで選手における最高得票率は、殿堂入り投票が記者の投票になって1年目の1960年に選出されたヴィクトル・スタルヒンの97.9%だと言われている。

【次ページ】 イチローは“誰でも投票できるはず”の一方で

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