酒の肴に野球の記録BACK NUMBER

“イチロー満票ならず”でも岩瀬仁紀の2年目選出でもなく…野球殿堂投票で一番の大問題とは「三冠王・松中信彦や小笠原道大すら消えてしまう」 

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2025/01/21 06:00

“イチロー満票ならず”でも岩瀬仁紀の2年目選出でもなく…野球殿堂投票で一番の大問題とは「三冠王・松中信彦や小笠原道大すら消えてしまう」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

イチローと岩瀬仁紀が野球殿堂に選考された一方で、投票を振り返ると浮かび上がる問題とは(代表撮影)

 今年の有権者の総数は353人、投票したのは349人。1人が7票をフルに使えば、投票総数は2443票になるはずだが、実際には1805票で、638票が使われなかった。1人当たり5.2人の名前しか書かなかったことになる。なお2024年は5.6人、2023年は5.5人だった。

 イチローに入れるかどうかを別にして、投票されなかった票がこれだけあるのはあまりにも惜しい。

「俺の考えでは、殿堂入りにふさわしい選手はそれだけしかいなかったのだから、仕方がないじゃないか」

ADVERTISEMENT

 というかもしれないが、有権者(表彰委員)は、1936年のプロ野球のリーグ戦開幕以来89年に及ぶ長いプロ野球に声援を送った多くのファンを代表して投票している。自分の好みや面識にとらわれるのではなく、高い見識を持ってできるだけ多くの選手に票を投じてほしいと思う。

 今年で言えば、史上最多セーブの岩瀬仁紀が2年目で当選したのは喜ばしいが「日本のマリアノ・リベラ」とも言える実績を持つ岩瀬は1年目で殿堂入りすべきではなかったか。

松中、小笠原…2000安打の豪華な面々も数多い

 さらに言えば、筆者は毎年、投票結果を見るたびに「この選手も殿堂入りせずに、過去の人になるのか」と感じてしまう。

 イチローと同じ1973年生まれを列記していこう。

 平成唯一の三冠王、松中信彦(今年の得票72票、候補5年目)や2006年パ、07年セとリーグをまたいで2年連続MVPを獲得した小笠原道大(31票、5年目)もこのままでは消えてしまいそうだ。

 松中と小笠原だけでない。日米2000本安打をクリアした以下の面々も殿堂入りしていない。宮本慎也(194票、7年目)、松井稼頭央(136票、2年目)、野村謙二郎(60票、7年目)、稲葉篤紀(35票、13年目)、井口資仁(34票、3年目)、石井琢朗(31票、8年目)、前田智徳(22票、7年目)、新井貴浩(15票、2年目)、小久保裕紀(14票、11年目)、荒木雅博(9票、2年目)、福浦和也(3票、2年目)である。

 100票に達していない候補は、このまま消えていく可能性が高い。

掛布が選出「エキスパート表彰」にも思うところが

 2000本安打と言えば、シーズン100安打を20年続けなければ達成できない。気の遠くなるような努力を続けた選手である。2024年オフまでにNPBの一軍の試合に1試合でも出場した選手は7400人超を数えるが、2000本安打は過去55人しか達成していない。彼らの偉業を顕彰すべきと常々思う。

 イチローの殿堂入りにかすんでしまったが、野球界最高の栄誉「野球殿堂」について、もっと広範な議論を盛り上げていくべきだと思う。そう感じるのは掛布雅之が選出された「エキスパート表彰」の基準にも思うところがあるからだ。〈つづく〉

#2に続く
「1656安打349HRの掛布雅之が選出だが」“イチローの師匠”に谷沢健一、三冠王ブーマーは…野球殿堂「記者が投票数使い切っていない」問題

関連記事

BACK 1 2 3
#イチロー
#岩瀬仁紀
#松中信彦
#小笠原道大
#ビクトル・スタルヒン
#稲尾和久
#若松勉
#王貞治
#山本浩二
#松井秀喜
#長嶋茂雄
#宮本慎也
#松井稼頭央
#野村謙二郎
#稲葉篤紀
#井口資仁
#石井琢朗
#前田智徳
#新井貴浩
#小久保裕紀
#荒木雅博
#福浦和也

プロ野球の前後の記事

ページトップ