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「僕はプロになれなかったから…同じことをさせたらアウト」なぜ“岩手の奥地の大学”から一挙6人のプロ野球選手が? 39歳監督の「超合理的」思考法 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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posted2024/12/17 11:03

「僕はプロになれなかったから…同じことをさせたらアウト」なぜ“岩手の奥地の大学”から一挙6人のプロ野球選手が? 39歳監督の「超合理的」思考法<Number Web> photograph by NumberWeb

39歳の若さで富士大を率いる安田慎太郎監督。一挙に6人ものプロ野球選手を輩出したウラには、監督独自の「超合理的思考」があった

 もちろん安田は「勝たなくていい」と思っているわけではない。むしろ、選手たちには「勝たなきゃダメだ」と強く伝えている。勝つこと自体が目的ではなく、その先にある目標を実現するために勝利という結果が必要だからだ。

「勝つことは大事ですよ。勝てば勝つほどアピールの場が増えて、結果的にドラフトの順位も上がるし、社会人のチームにも行きやすくなる。でも、そのために選手を壊すなんて本末転倒もいいところじゃないですか」

 取材をしてわかったことがある。安田は実益をもたらさない“建前”を嫌う指導者だ。そして、徹底したリアリストでありながら、すべてを野球に捧げることができるロマンチストでもある。だからこそ、6選手がドラフト指名されるという明確な結果を残すことができた。

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 11月22日、神宮球場。富士大は明治神宮大会の初戦(2回戦)で、創価大に0対3で敗れた。

 エースの佐藤が4回を投げて3失点。オリックス1位の麦谷祐介は4打数無安打、広島4位の渡邉悠斗は4打数1安打、巨人育成1位の坂本達也は3打数無安打と、ベスト4に終わった昨年に続き優勝には手が届かなかった。

 悔しくないわけがない。それでも、選手たちが必要以上に肩を落とすことはないだろう。卒業する世代にも、それに続こうとする後輩たちにも、「ゴールはここではない」という意識が共有されているからだ。

周りは「たまたまだ」と…でも「ここがピークじゃない」

 安田が楽しげに語っていた「これからの話」を思い出す。

「いまの1年生、もっといいですよ。持っているものだけなら今年のドラフトにかかった世代よりもいい。期待通りに伸びるかどうかはわかりませんけど、結果が出たことで僕の話に信憑性が生まれて、より意識が高くなる気がします。

 周りはたまたまだと思っているかもしれないけど、ここがピークじゃない。そもそも4年生が入ってきたときにも『6、7人はプロに行ける』って言ったんですよ。そのときは誰も信じてなかったですけどね」

 この冬も、白銀のグラウンドに隣接した屋内練習場で、次のドラフト候補たちが黙々と汗を流している。

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