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「関田くんは歴代No.1」では、なぜもう一人のセッターが37歳深津旭弘だったのか? 元日本代表セッター・朝長孝介が語る“二番手”の重要性
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byL)Volleyball World、R)Takahisa Hirano
posted2024/08/01 17:03
セカンドセッターとしての役割を全うする深津旭弘(右)。絶対的な存在だった関田誠大に対し、その人選はブラン監督の頭を悩ませた
当時は世界の高さに対抗して速さを追求すべく、日本代表・植田辰哉監督はセッターがトスを上げてからアタッカーがボールをヒットするまでのスピードを0.8秒に設定した。確かに一見すれば速いが、打つ側からすれば捉えるポイントが限定されるため、全員が打ちやすいわけではなく、むしろ打ちたい場所に打てず不満を訴える選手もいた。
では、どう調整したのか。朝長はニヤリと笑う。
「練習では0.8秒で、という姿勢を見せるけど、試合になれば関係ない。高いトスが欲しい選手には速さなんて無視して高さを優先していました。関田くんも学生時代の話を当時の先生から聞いたら、同じように『言うことを聞かなかった』と(笑)。監督からの指示に時折、反してでも、アタッカーとの関係性をつくるのが上手なんでしょうね」
朝長が褒める深津のコミュ力
トスの技術以外に、日本代表セッターとして求められるもう一つの要素がコミュニケーション力。チーム内を円滑に回すという意味も含め、朝長が関田と同様に高く評価するのがもう一人のセッター、深津旭弘だ。
37歳で五輪初出場。正セッターとして出場する関田に比べ、深津が出場するのはセッターが前衛時にオポジットとセットで交代する2枚替えや、劣勢時に限られる。とはいえ、セカンドセッターのチーム内での役割は重要で、2023年の1シーズンに関してはこのポジションに最もふさわしいのは誰かというのがチームの課題でもあった。
深津だけでなく、ネーションズリーグでは永露元稀が、アジア選手権と五輪予選では山本龍が選出され、今年のネーションズリーグで関田がベンチ外になったポーランド戦では大宅真樹が招集されている。そうした中で、パリ五輪のメンバーとして選ばれたのが深津だった。
当然そこには理由がある。自身も日本代表では宇佐美に次ぐセカンドセッターであり、もともとセッターを始めた高校時代から「二番手だった」という朝長の見方はこうだ。