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「6億円で0戦0勝」の馬も…セレクトセール“高額落札馬は走らない”は真実か? 歴代トップ10の“意外なその後”「自分の値段以上に稼いだ馬は…」
posted2024/07/14 11:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Sankei Shimbun
国内最大の競走馬のセリ「セレクトセール2024」が、7月8日と9日、苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。
セレクトセールは毎年高額落札馬が出ることで知られており、今年も初日の1歳セッションで6頭、2日目の当歳セッションで4頭が3億円(税抜き、以下同)以上で落札されるなど、大盛況のうちに幕を閉じた。
“高額落札馬は走らない”は真実か?
今年の最高額は、ロデオジャパンによって落札されたデルフィニアIIの2023(牡、父キタサンブラック)で5億9000万円。日本のセリ史上2位の高額馬となった。
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評価のポイントは、血統や馬体、身のこなしなどだ。当然、期待が大きい馬ほど高額になる。
しかし、どういうわけか、昔から高額落札馬は走らないと言われている。
それは本当なのか。
過去のセリで落札された高額馬のその後を見ていきたい。
歴代最高額「6億円ホース」のその後
日本のセリの歴代最高額馬は、2006年のセレクトセール当歳セッションにおいて6億円で落札された牝馬のディナシーである。
父キングカメハメハの初年度産駒で、母はエリザベス女王杯を勝ち、ドバイワールドカップで2着になるなど活躍した女傑トゥザヴィクトリー。これだけ高額になったのは繁殖牝馬としての将来性を見込まれたからだと思われ、競走馬として一度も走ることなく繁殖牝馬となった。
2010年から2022年まで9頭の仔を産んでおり、数字が明らかになっている産駒のなかで最も高く売れたのは4番仔の牡馬ピラータで1億円(2015年セレクトセール)だった。次に高額だったのは5番仔のミッキーポテトで4500万円(16年セレクトセール)。これらはさすがにいい値がついたが、産駒が売れるまでに、種付料のほか、母仔の預託料などもかかるので、売却額がそのまま利益になるわけではない。300万円台でしか売れなかった仔もいるので、母としても大赤字だったことは間違いない。
産駒のなかで、競走馬として最も活躍したのは7番仔のメイサウザンアワーで、4勝して6561万円の賞金を稼いだ。こうした額を加算し「ディナシーの経済効果」のような数字を出したとしても、自身の購入額の6億円には遠く及ばない。
だからといって、繁殖牝馬としても大成しなかった、と断言するのはまだ早い。すでに孫たちもデビューしており、2番仔アルーシュの仔サンライズウルス(牡、父へニーヒューズ)は5勝し、リステッドのベテルギウスステークスを勝っている。また、前述のメイサウザンアワーは繁殖牝馬となり、コントレイルの仔を産んでいる。種付料1200万円(交配した年)の種牡馬をつけたのだから、繁殖牝馬として大いに期待されているのだろう。