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長谷部誠34歳「謝る必要なんてないです!」物議の“ロシアW杯ボール回し”翌日、西野朗をさえぎり…日本代表が受け継ぐ“長谷部イズム”とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2024/06/09 17:01
ロシアW杯、会見に臨んだ際の長谷部誠。あのポーランド戦のボール回し翌日、西野朗監督に対しての言葉の真意とは
「様々なことに勇気をもってチャレンジして、次につながる戦いが出来たかなと。10年、14年、18年と様々な戦い方をしてきましたけど、一歩一歩、進んでいる感覚があります」
強調したのは、自分たちの志を貫けた誇りだった。
「ピッチの中だと、勇気を持って、自分たちからどんどんチャレンジした。攻撃だけなく、相手がボールを持って守備をするときにも、自分たちからアクションを起こしてやっていく。それが(ベルギー戦でも)出来た。日本代表が成長したものでもあるのかなと思います」
代表チームはクラブチームと比べて、選手の入れ替わりが激しい。ゆえに遺産が受け継がれにくく、監督交代による変化も大きい。
しかし――。
吉田麻也「ずっと彼を見て、学ぶことがたくさんあった」
「7年半、彼と一緒にやってきましたけど、本当にあれだけチームのことを考えてプレーできる選手は少ないでしょうし……。ずっと彼を見て、その姿勢から学ぶことがたくさんあったので」
ベルギー戦翌日、吉田麻也は涙ながらに長谷部との思い出を振り返った。そして4年後のカタールW杯では自分なりのリーダーシップを発揮して、チームをまとめた。吉田が引っ張ったチームはロシアで戦った代表からの歴史のつながりを感じさせた。
たとえば、カタールW杯におけるスペイン戦の後半。相手のバックパスに合わせて、選手たちが自発的にリスクを冒して猛プレスをかけていった結果、ボールを奪い、それを堂安律が決めた。あれも「勇気」がなければできないプレーだった。
そして、もう1つ。現在の日本代表にも継承されているものがある。
一つひとつの試合にかける想いの強さだ。
かつては、アジアの格下と戦うW杯2次予選でプレーすることを疑問視する声は多かった。その中でも、こう言い続けたのが長谷部だった。
「オレはどんなときでも喜んで代表に行くから」
久保、堂安…現代表にも受け継がれる闘志
今の日本代表では以前にも増して競争が高まっている。久保建英などは「過去最高に厳しいレギュラー争いがあると思います」と語りつつスタメンでプレーすることに喜びを感じ、並々ならぬ闘志を燃やす。さらには堂安のように明言する選手すら出てきた。
「来たくない選手は来なければいい。僕は全部の試合に出たい!」
長谷部が表現しようとしてきたものが――多少の姿形を変えながらも――日本代表に今も息づいている。だからこそあの時の選手たちが「後悔をしたくない」と歯を食いしばり、一丸となって志を築いた意義を感じずにはいられない。
ロシアW杯で、日本代表の戦いを終えた長谷部。その決断を伝えるまでの経緯で――現代表である鎌田大地、そして彼にキャプテンマークを初めて託した岡田武史らとの縁にも、彼らしさがあふれていた。
<つづく>