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長谷部誠34歳「謝る必要なんてないです!」物議の“ロシアW杯ボール回し”翌日、西野朗をさえぎり…日本代表が受け継ぐ“長谷部イズム”とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2024/06/09 17:01
ロシアW杯、会見に臨んだ際の長谷部誠。あのポーランド戦のボール回し翌日、西野朗監督に対しての言葉の真意とは
「ブラジルW杯が終わったときは、後悔と悔しさがものすごかった。この大会ではそういう想いをしたくない、全部出し切りたいんだ」
岡崎は左足首を負傷していたが、強行出場のメドが立った。それに伴い、バックアップメンバーとして帯同していたFWの浅野拓磨がチームを離れることが決まった。そんな浅野だから発信できる魂の叫びもあった。
「僕はW杯のメンバーから外れて、今までにない悔しさを味わっています。選ばれたときの喜びを忘れないでプレーしてほしいです」
各々が胸の内をさらけ出した。あれでスイッチが入ったと証言する選手は多いし、長谷部も「それぞれの価値観をお互いに尊重しあえる」集団になれたと感じた。
果たして、悔しさを払拭するかのような戦いを日本は見せていった。コロンビアとの初戦ではアジアのチームとして初めて、南米のチームをW杯で破った。続くセネガルとの試合では2度もリードを奪われながら、同点に追いついた。日本がW杯で2度も同点に追いついたのは、あの試合だけだ。
ポーランド戦、“物議のボール回し”の命を受けて
そして、ポーランド戦を迎えた。
先制を許して、0-1のまま75分を少し過ぎた頃だった。他会場で行なわれている試合で、コロンビアがセネガル相手にリードを奪った。両会場がそのまま終われば、グループリーグ突破が決まる。
そこで西野監督は決断した。自分たちが攻めないかわりに、すでに1点リードをしているポーランドに「このままで良い」と思わせよう、と。
82分に監督の命を受けて交代出場した長谷部は、監督の意図をピッチの上で言葉とアクションをまじえながら選手たちに伝えていき、リスクをかけないボール回しで試合を終わらせた。
結果、日本はグループリーグ突破を決めた。
ただ、消極策と言われかねないこの選択は、遠く離れた日本で物議を醸し、論争を巻き起こした。テレビのワイドショーでもその是非を問う声が上がるほどだった。
「謝る必要なんてないですよ!」
翌日、キャンプ地の大広間に選手やコーチ陣だけではなく、全てのスタッフが集められた。そこで、西野から謝罪があった。
「みんなに誇りを持たせられるような戦い方をさせられなくて申し訳なかった」
一通り話し終えた西野が、別の話題に移ろうとしたときのことだ。
「ちょっと待ってください!」
長谷部が、流れをさえぎった。