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高校中退してメジャー挑戦…23歳の日本人が伊良部秀輝と対決“マック鈴木の伝説”「マイナーの用具係を経て…」伊良部が試合後に残した言葉 

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水次祥子

水次祥子Shoko Mizutsugi

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photograph byKazuaki Nishiyama

posted2024/05/25 11:02

高校中退してメジャー挑戦…23歳の日本人が伊良部秀輝と対決“マック鈴木の伝説”「マイナーの用具係を経て…」伊良部が試合後に残した言葉<Number Web> photograph by Kazuaki Nishiyama

かつてマリナーズやロイヤルズで活躍した日本人メジャーリーガー、マック鈴木

その後の伊良部…大活躍していた

 快投を披露した翌朝のニューヨークのメディアには、賞賛の言葉が躍っていた。

「イラブが自分自身の立場を救った」

 ニューヨーク・デイリーニューズ紙はそう書き、ニューヨーク・ポスト紙はこう賞賛した。

「マウンド上のイラブは、ヤンキースが期待した通りの姿だった」     

 ヤンキースのチーム内は、ほっとしたムードに包まれた。試合後のジマー監督代行は「本当に見事な投球だった。以前にも見せてくれた彼の投球と同じだった。こういう投球をまたやってくれることを、私たちはずっと待っていたんだ。これ以上は望めないというくらいの投球だった」と目を細めた。メル・ストトルマイヤー投手コーチは、大崩れした前回の登板以降、伊良部につきっきりで投球フォームの修正に取り組んでいただけに、結果につながったことを誰よりも喜んだ。

「前回の登板よりも球が速く、力があった」

 そう振り返ったのは、バッテリーを組んだホルヘ・ポサダ捕手だった。大きな注目を集めた投げ合いが、伊良部に一段高いモチベーションと力を与えていたことを女房役として感じていたようだった。伊良部自身、登板後のクラブハウスで報道陣に囲まれ、こう振り返っている。

「この試合に、多くの人が興味を持っていることはわかっていた。いい刺激と緊張感を持って投げられた。海を渡ってこっちに来ているのだから、お互いに頑張りたい」

 伊良部はこの登板の後、先発ローテに残り、6月から7月にかけては無傷の6勝をマーク。7月にはメジャーで自身2度目となる月間最優秀投手賞を受賞した。

 メジャーでの日本人対決はその後、野茂英雄対イチロー、野茂英雄対松井秀喜、イチロー対松坂大輔、ダルビッシュ有対大谷翔平といった投手対打者による名勝負がいくつも生まれ、ダルビッシュ有対田中将大、岩隈久志対田中将大といった先発投手の投げ合いでは、縁の深い者同士ならではのドラマが繰り広げられた。伊良部とマックの投げ合いは、そんな日本人メジャーの対決の歴史の幕開けであり、その1ページを彩る好勝負だった。

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伊良部秀輝にヤンキース監督が強烈発言「プロ野球を辞めて別の仕事を探せ」追い詰められた伊良部の姿…マック鈴木との“伝説的投げ合い”ウラ側

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