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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
高校中退してメジャー挑戦…23歳の日本人が伊良部秀輝と対決“マック鈴木の伝説”「マイナーの用具係を経て…」伊良部が試合後に残した言葉
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2024/05/25 11:02
かつてマリナーズやロイヤルズで活躍した日本人メジャーリーガー、マック鈴木
マックは5回1/3を5安打7失点(自責点4)、5四球3奪三振で黒星。伊良部は7回にラス・デービスにソロ本塁打を浴びたものの7回を投げきり4安打1失点、無四球5奪三振でシーズン初白星を挙げ、ヤンキースは 10−1で圧勝した。
この試合を機に…マック鈴木の“評価UP”
「2人の日本人選手が同じ日に投げることは、意識しなかった。ただ試合に勝つことだけを考えていました」
試合後のマックは、淡々と試合を振り返った。
メジャーの日本人選手としては先駆け的な存在の1人でありながら目立つことが少なかったマックにとっては、この試合が恐らく人生で最高に注目を集めた舞台だったに違いなかった。滝川二高を中退し、十代で渡米。マイナー球団で雑用係からスタートさせ、ついに手にした先発登板のチャンスだった。特別な思いやモチベーションの高まりはあったかもしれないが、それを言葉や表情に出すことはなかった。
その後のマック鈴木…移籍で状況好転
結果的には負け投手となったが、ちょうど黄金期の真っただ中だったヤンキースを5回途中まで無失点に抑えた投球は印象的だった。この登板の翌月にマックはトレードでメッツ、さらにロイヤルズへと移っているが、評価され望まれたからこその移籍だったと思う。その証拠にロイヤルズ移籍後のマックは先発ローテの一角を任され、2000年には32試合の登板中29試合に先発、メジャーで自身最多の8勝を挙げている。
ロイヤルズには若い選手が多かったこともありチームにはすぐに馴染み、楽しそうに見えた。その年のシーズン序盤に取材で訪ねたときには「このチームは調子が悪くても変わらないし、落ち込むこともないし、雰囲気がいい。仲のいい選手はマイク・スイーニー。彼はいつもお祈りしてる。僕と違って真面目ですね」と冗談交じりに話していた。スイーニーというのは当時スターの階段を上り始めたばかりの若き主砲だったのだが、そんな選手ともすぐに打ち解けられるのは、やはり同じようにマイナーから這い上がってきた者同士、わかり合える部分が多かったのだろう。伊良部と投げ合った試合での力投が、マックをロイヤルズという居場所に導いたのかもしれなかった。
そして伊良部にとっても、あの日本人先発対決は大きな意味を持つ試合になった。