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「野茂に何かがある」メジャー戦力外の予兆…15年前、なぜ野茂英雄は“ひっそりと引退”を選んだのか「すでにロッカーは空っぽだった」

posted2023/05/18 11:03

 
「野茂に何かがある」メジャー戦力外の予兆…15年前、なぜ野茂英雄は“ひっそりと引退”を選んだのか「すでにロッカーは空っぽだった」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「空白の2年間」を経て、3年ぶりにメジャー昇格を果たした野茂英雄。2度目の登板も打たれ、4失点で降板した

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水次祥子

水次祥子Shoko Mizutsugi

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JIJI PRESS

 全米でトルネード旋風を巻き起こし、日本人メジャーリーガーのパイオニアになった野茂英雄。その実績から考えれば「引退劇」は超異例だったといえる。特別な引退試合も、会見も行われず、ひっそりと去ったからだ。一体なぜ――。野茂英雄の現役晩年を追った記者が綴る「本当のノモ論」。〈全2回の#2/#1へ〉

 ◆◆◆

「ヒデオ・イズ・バック!」

 ロイヤルズの監督は声を上げた。2008年4月、野茂英雄の3年ぶりのメジャー昇格が決まったからだ。

メジャー再挑戦…監督はあのヒルマンだった

 実は当時ロイヤルズのGMだったデイトン・ムーアは、当時39歳だった野茂と契約したもののメジャーに昇格させる可能性はほぼないと思っていたという。それでもカムバックできた裏には、監督がトレイ・ヒルマンだったことも大きかったように思える。新庄剛志らを率いて日本ハムを日本一に導いたヒルマン監督は、退団の翌年である08年からロイヤルズ監督に就任。キャンプ中から野茂に敬意を払い、気遣っていた。それゆえ、昇格の喜びも素直に語っていた。

 当の野茂も、いつも通りの淡々とした口調の端々から、たしかな高揚感がうかがえた。

「またメジャーで投げられる。すごくうれしいですし、選んでくれたチームにもすごく感謝しています。(経験のないリリーフという役割だが)バッターを抑えてイニングをゼロにすることは先発もリリーフも変わりはないと思うんで、点をあげないように、チームが勝てるようにしていければいいと思っています。1試合でも多く投げたいですし、1試合でも多くチームが勝つように祈っています」

トルネードを捨てて…メジャー復帰戦の結果

 05年7月15日以来となる1000日ぶりのメジャーのマウンドは4月10日、本拠地でのヤンキース戦で巡ってきた。

 その頃には、両手を高く上げて構えるあのトレードマークのトルネード投法をやめ、どんな状況でもセットポジションから投げるようになっていた。「ベネズエラで試してみて、それから。ワインドアップだと肘に負担がくるとわかったので」と当時、明かしていた。

【次ページ】 今まで通りにマウンドに上がりました

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