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大谷翔平効果で「エンゼルスファン数が巨人超え」の衝撃…大谷人気“一強”が示す「巨人離れ」「野球中継の栄枯盛衰」
text by
内野宗治Muneharu Uchino
photograph byGetty Images
posted2024/05/14 17:01
ドジャース移籍前の2023年12月、スポーツ調査会社のレポートでエンゼルスのファン数が巨人ファンの数を超えたことが明らかになった
時代は組織から個人へ
かつて栄華を誇った巨人軍の天下もはるか昔、時代のスポットライトは異国の地で活躍するたった一人のスター選手のもとへ……。
今や大相撲以上に日本の「国技」とも言える、野球というスポーツにおけるこの劇的な変化は日本社会の変化を反映している。仮に読売ジャイアンツを「昭和の大企業」としたら、大谷は「シリコンバレーの起業家」のような存在だ。20世紀後半の高度経済成長期からバブル期にかけて、日本経済を牽引した大企業の多くは今やすっかり零落し、代わりに起業家やアーティストなど才能ある個人が世界を舞台に活躍するようになった。日本から世界へ、そして組織から個人へと時代が移り変わった。昭和の「古き良き時代」を象徴する、日本の“ローカル球団”読売ジャイアンツよりも、平成生まれの世界的スター大谷に僕らが魅了されるのは当然だ。
グローバル資本主義がたどり着いた極致
2023年12月に大谷がドジャースと結んだ契約は、1年あたりの年俸が7000万ドル(約101億5000万円、当時のレート)という破格の契約だった。一方、かつて日本球界を代表する「金満球団」だった読売ジャイアンツの、2023年における選手年俸総額は約37億円。ジャイアンツの選手全員の年俸を足しても、大谷が1年で稼ぐ額の半分にも及ばない。カネがないよりも、あるほうに人々の目が向くのも、これまた自然なことだ。
総額1015億円という大谷とドジャースの契約は、MLBの圧倒的な資金力だけでなくアメリカ経済の好調さ、そして21世紀のグローバル資本主義がたどり着いた極致を示している。日本のメディアはただただ「大谷すごい!」と連呼するだけだが、プロ野球チームが一人のアスリートに1000億円も投資できる現代社会というのはいったい何なのだろうか。僕らが生きるこの社会はどんなメカニズムで動いているのか。
<つづく>