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大谷翔平効果で「エンゼルスファン数が巨人超え」の衝撃…大谷人気“一強”が示す「巨人離れ」「野球中継の栄枯盛衰」 

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内野宗治

内野宗治Muneharu Uchino

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photograph byGetty Images

posted2024/05/14 17:01

大谷翔平効果で「エンゼルスファン数が巨人超え」の衝撃…大谷人気“一強”が示す「巨人離れ」「野球中継の栄枯盛衰」<Number Web> photograph by Getty Images

ドジャース移籍前の2023年12月、スポーツ調査会社のレポートでエンゼルスのファン数が巨人ファンの数を超えたことが明らかになった

大谷翔平の神話性

 2018年に大谷がロサンゼルス・エンゼルスの選手としてプレーするようになってから、日本でエンゼルスの試合が毎日テレビ中継されるようになっただけでなく、本拠地のエンゼル・スタジアムまで足を運ぶ日本人が続出した。米国在住者はもちろん、日本から飛行機ではるばる訪れる人も後を絶たなかった。大谷が日本人にとって「神」だとしたら、エンゼル・スタジアムは「聖地」だった。まるでイスラム教徒がサウジアラビアのメッカに「聖地巡礼の旅」へ出かけるように、「大谷教」の信者である日本人はエンゼル・スタジアムヘと足を運んだ。大谷翔平という「神」を崇拝しに……。そして2024年からはもちろん、新天地のドジャー・スタジアムが新たな「聖地」になる。

 連日のように日本のテレビに映る大谷は、今や日本一の有名人だ。しかしアメリカでプレーする大谷の姿を実際に、自分自身の目で見たことがある人はどれくらいいるのだろうか? 僕を含めて多くの人は、テレビの中継映像やインターネットのニュースで大谷を見ているだけだ。メディアに映る姿を見て、大谷翔平という人間がこの世に存在していると「信じている」にすぎない。だからこそ僕らは勝手に想像を膨らませて、大谷翔平という存在に「神話性」を付与しているとも言える。

大谷の神格化と巨人の存在感低下

 ある物話が神話性を帯びるためには、多くの人々が「共同幻想」を抱くことが条件となる。たとえば「国家」や「宗教」はいずれも共同幻想の産物だ。国家や宗教は目に見えるものではないが、それゆえに「国の成り立ち」や「信仰のはじまり」といった物語を通じて人々にその存在を信じさせる。そして今日、物語を流布するのはメディアの仕事だ。たとえば「悪の帝国ロシアと戦うウクライナ」といったシンプルでわかりやすい物語を人々に信じ込ませることによって、メディアの商売は成り立っている。「日本の誇り、大谷翔平」もそんな物語のひとつで、現在、日本で最も人気のある物語と言えよう。あるいは最も信奉者の多い神話、と言って良いかもしれない。メディアが繰り返す物語を通じて大谷は「神」になったのだ。

【次ページ】 国民的人気を誇った巨人が…

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