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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平ドジャース10年1000億契約に「ジョークだろ?」MLB役員が憤慨していた“超異例の97%後払い”の是非
posted2024/03/31 11:00
text by
ジェフ・フレッチャーJeff Fletcher
photograph by
Getty Images
本稿は、エンゼルス加入時から大谷の取材を続ける番記者、ジェフ・フレッチャー氏の著書『SHO-TIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』(訳・タカ大丸、徳間書店刊)の抜粋した記事です(全2回の前編)。
ドジャース入りが報じられる前、「大谷がトロント(ブルージェイズの本拠地)に向かっている」という誤報が飛び交った。空港に降り立った人物が別人(ロバート・ハージャベック/ソフトウェア事業で巨大な資産を築いた61歳のカナダ人ビジネスマン)だったことで沈静化したものの、話題は「大谷がどの球団を選ぶのか」で持ち切りだった――。
(以下、抜粋)
大谷が所属するCAAが揺さぶりをかけた?
野球記者一同は、大谷が南カリフォルニアからまったく離れていなかったというニュースを配信し始めた。
大谷のチームメイトも、全米野球記者のバスター・オルニーに対して、「この話は最初から怪しいと思っていた、なぜなら、長時間眠り、起きるのも遅い大谷が、朝9時に出発するような飛行機を選ぶはずがないからだ」と指摘した。
その日の晩、ジョン・ポール・モロシ(MLBネットワーク)は不正確な報道をしてしまったことにより、謝罪声明を出した。
数日後には、J・P・ホーンストラ(LAを拠点とする野球ライター)も同じく謝罪した。
この騒動により、一種の陰謀論がささやかれるようになった。ロバート・ハージャベックが、大谷と同じクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)に所属しているからだ。
CAAはハージャベックのトロント行きフライトを利用して、ドジャースにもっと高額と好条件を出させようと揺さぶりをかけたのか。ハージャベックは「そういった話にはいっさい真実がない」と断言した。CAAは全世界に展開する企業で、数千人の従業員が所属して、スポーツ界とエンターテインメント界の数千人のクライアントを抱えている。
記者たちが味わった“特別な一日”
あの日の大騒ぎにより、野球界がどれほど大谷のFAに注目し、そして振り回されているかが、あらためて浮き彫りとなった。
「フォックス・スポーツ」のジェイク・ミンツ記者は、あの忘れられない1日を次のように総括した。
「1日で怒り狂い、夢中になり、奇妙な展開になり、爆笑もので、かつ悲しさと感動を一気に味わった特別な日だったよ」
アンドリュー・フリードマンは、ドジャースの野球部門最高責任者だが、大谷がトロントに向かっていると報じられた狂騒の金曜午後は、ジェットコースターに乗ったときのような激しい感情の揺れを感じたと率直に告白した。
翌12月9日に、彼は息子のサッカーの試合に顔を出していた。フリードマンは複数の任務を同時にこなしており、ウェブ会議でドジャースが獲得を目指していた別の選手との契約交渉に臨んでいた。
彼は大谷の代理人ネズ・バレロからの電話をとるためウェブ会議をいったん中座した。フリードマンがのちに語ったところによると、そのときのバレロが発した正確な言葉はもう思い出せないが、とにかく要点は素早く伝えられた。
大谷はドジャースを選んだということだ。しばらくして、この決断は大谷のSNSで公表された。
こうして、数週間にわたる“サスペンス”は不意に終わった。