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オープン戦最下位でも…“今年で勇退”のOB会長・川藤幸三が目を細める理由「あの時に思ったわ。お、岡田変わったな、と」指揮官に重ねる名将の面影
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![酒井俊作](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/03/26 11:02
![オープン戦最下位でも…“今年で勇退”のOB会長・川藤幸三が目を細める理由「あの時に思ったわ。お、岡田変わったな、と」指揮官に重ねる名将の面影<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/9/700/img_3994e384ed2beeccb555a820364853a7410811.jpg)
球団史上初となる2年連続日本一を目指す阪神・岡田彰布監督
選手として脂が乗り始めた頃、球団のマネジャーから聞いた藤本の話も鮮明に憶えている。そのマネジャーはこう言った。
《カワ、おじいちゃんの話をしたるわ。藤本さんは落ちていくベテランと伸びていく若手の席を一緒にしない。電車の席を隣にしない。相部屋にしないんや》
ベテランの愚痴は、希望に満ちた若手には百害でしかない。そういった人間関係の配慮を欠かさない人だった。
組織を束ねる要諦
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カワさんが聞いた話は、もうひとつある。
《藤本さんはな、お前ら選手にめったなことを言わんかったやろ。その代わり、コーチに厳しく当たっていた》
世の中には古くても新しい摂理がある。カワさんの述懐は、最近どこかで聞いたような話だった。岡田も選手と一線を引き、言動や人間関係を細かく観察し、起用に反映させる。コーチに厳しいのも同じだ。名将だけが知る、組織を束ねる要諦があるのだろう。
昨季、岡田は2リーグ分立後、球団最多の優勝2回の監督として藤本と肩を並べた。カワさんの思い出は名将の系譜である。
「監督も、いろんな段階がある。岡田はそれを全部、感じながらやっとる。阪神時代、オリックス時代、今回は3回目。やるたびに監督としての経験を積んでいく。まして、08年は最大で13ゲーム差をつけながら、ひっくり返された苦い経験もある。そういうんが、去年は、あらゆる面でうまくできたんじゃないか」
川藤から見た「今どきの若者」
今年も最年長は34歳の西勇輝で、若いチームである。岡田が「連覇を狙う」と公言するように、前途は明るい。
「ホンマにええチームになってきたよ。休みの時に他球団のキャンプを覗いたんや。選手たちの動きやスタンドから受ける雰囲気で、(阪神は)やっぱりコイツら、落ち着いてやっとるなと」
日が傾いた宜野座では売り出し中の前川右京と野口恭佑の特打が続いていた。しばし、話すのをやめ、じっと見ていた。
カワさん、今の若者はどうですか。
「どの時代も一緒。いまのこの雰囲気から、飛び出したいヤツがおるねん。それが一人前になったり、一軍に入ったり、レギュラーになったりするヤツや。だから、そこをずっと見とかんと」
12球団最年長の66歳指揮官と若者が紡ぐ夢はまだ続いていく。カワさんは今年でOB会長を退くという。オープン戦は3勝14敗1分けの最下位に終わったが、静かに見守ると決めている。
〈前編からつづく〉
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