酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「高校時代はマネージャーでしたが」慶応大・女性チーフアナリストが笑顔で語る“やりがい”「主将だった兄に“野球経験がないのがいい”と」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/03/11 17:01
慶応義塾大学野球部でチーフアナリストを務める福井みなみさんに話を聞いた
「コロナの影響で、大学はほぼオンラインでの授業でした。でもそのおかげで1年生の時は合宿所かグラウンドにいることが多く、選手と長く接することができて、かえって良かったなと思います。ただ東京六大学は各対戦が2試合で打ち切りになっていました。観客も制限が多くて、あまり応援できない状態でした」
その状況を経て現在、アナリストは8人。新2年生が4人、新3年生が3人、新4年生は福井さんひとり。最上級生でもあり、後輩をけん引していく立場となった。その慶応大は、弾道計測器「ラプソード」を日本で初めて使った大学と知られる。今は、どんな機器を扱っているのか?
「機器としては『ラプソード』とバットのグリップエンドに装着して、バットスピードなどを測定する『ブラスト』の2つですが、アナリストが機器の管理、メンテナンスから、実際に使う際の設置、測定後のフィードバックまで全部行っています。あとは握力計などもあります。
『ラプソード』は、練習中に使うことが多いので、そのデータをグラフ化したり、ビジュアル化したりして選手に見せています。また、東京六大学の試合を行う神宮球場には、同じ弾道計測器の『トラックマン』が設置されているので、相手チームの投手のデータをビジュアル化して、投球の特徴を伝えることもしています。ただバイオメカニクス的な領域は扱っていません。
私たちはデータの特徴について伝えるだけです。それを『どう解釈して活かしていくのか』については選手にゆだねています。気になることがあれば、聞いたりはしますが」
入部したときに「データ講習」を実施しています
機器の進歩によって、今では投球、打球のデータを録ることは誰でも簡単にできるようになった。大事なのはどんなデータ、情報を提示するか。それに福井さんたちアナリストはどのように対応しているのか。
「アナリストは投手担当と野手担当に分かれるのですが、できるだけデータに触れるとともに、データ関係の記事や論文、YouTubeなどもたくさんあるので、グラウンドに降りていない時間は、そうした勉強をするようにしています。
グラウンドに降りている時間は、アナリストは撮影をしていることがほとんどです。私自身は投手担当ですが、投手、野手担当に分かれていても、練習中に関しては自チームの選手は均等に見る必要がありますし、コミュニケーションも大事なので、学年関係や担当関係なくしっかり選手を見るようにしています。