酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
谷繁元信、黒田博樹の野球殿堂は異論なしだが…石井琢朗や小笠原道大、和田一浩ら「2000安打達成+有資格者なのに未選出」が25人いる
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byTamon Matsuzono/Hideki Sugiyama
posted2024/02/05 17:00
谷繁元信と黒田博樹。プレーヤー部門で今年の野球殿堂入りが決まった
21江夏豊206勝
MVP2回、最多勝2回、最多奪三振6回、最優秀防御率1回、最優秀救援投手5回を獲得。1968年にはNPB記録のシーズン401奪三振を記録。しかし江夏も清原和博同様、覚醒剤取締法違反で有罪判決を受け服役している。このために殿堂入り表彰の資格を失った。
プレイヤー部門の野球殿堂入りの投票は、取材歴15年以上の記者によって行われる。1人が7名以内の候補名を記入して投票する。今年でいえば358人。有効投票数は354票だった。そのうち75%以上(今年は266票)獲得すれば殿堂入りが決まり、3%未満で被選挙資格が失効する。
誰かの意見に引っ張られるなど、極端なバイアスがかかるとは思われないが、それでも「なぜこの選手に票が入らないのか?」という事態が起こる。
MVP、タイトルを獲得した選手も評価してほしい
一方で通算1199安打の川相昌弘の得票率が62.4%と高まり、2~3年先の殿堂入りが有力になっている。川相はMLBの記録をも上回る533犠打を記録している。「世界一」の記録を持つということで川相を「殿堂入りにふさわしい」と評価するのは一つの見識だろうが、そうであるなら2000本以上の安打を打ち、MVPや複数回のタイトルなどを獲得した選手も平等に評価すべきではないかと思う。
一世を風靡した選手が野球殿堂に選出されず、年老いていくのを見るのは、当時声援を送ったファンにとっては見るに忍びない。
野球殿堂入りは、プロ野球を志した選手にとっては「野球人生の総決算」ともいうべき最終目標である。それだけに――記者の中には「自分が担当した球団の選手」「ファンだった選手」に入れる人もいるようだが、野球殿堂投票は「人気投票」ではないはずだ。「入れたい選手」ではなく「殿堂に入るべき選手」に投票するという高い見識を持つべきではないか。
プロ野球の歴史を作ってきた野球人に最大限の敬意を表すためにも、野球殿堂の顔ぶれをさらに充実させる必要があろう。表彰の基準を見直すなどして「入るべき選手」を漏らさず殿堂入りさせる仕組みを作る必要があると思う。