酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
谷繁元信、黒田博樹の野球殿堂は異論なしだが…石井琢朗や小笠原道大、和田一浩ら「2000安打達成+有資格者なのに未選出」が25人いる
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byTamon Matsuzono/Hideki Sugiyama
posted2024/02/05 17:00
谷繁元信と黒田博樹。プレーヤー部門で今年の野球殿堂入りが決まった
土井正博はクラウン時代の1977年7月5日に史上10人目の2000本安打を記録したが、殿堂入りしないままだ。1970年代のパ・リーグは、野村克也(南海)、張本勲、大杉勝男(ともに東映)、長池徳士(阪急)などの強打者がひしめき、「無冠の帝王」と言われた。しかし1975年に初の個人タイトルとなる本塁打王を取った。タイトルの実績的にはさみしいが、以後の選手と比べても殿堂入りしていないのは不可解だ。土井は長く打撃コーチとして活躍したが、昨年12月に80歳になった。
石井琢朗は遊撃手としての出場が1767試合と、引退時点では日本一(今は坂本勇人2046試合、鳥谷敬1777試合に次ぐ3位)。リードオフマンタイプで盗塁王4回。2018年に殿堂入り資格を得たものの、このところ得票率を落としている。
大島康徳は本塁打王、最多安打各1回で、ベストナインもゴールデングラブは獲得していない。プレイヤー表彰で当選せず、エキスパート表彰に回ったが、得票率は低い。すでに故人。
新井貴浩は、今年から資格ができた。1年目は7.9%だったが、MVPを獲得しているので今後伸びていく可能性がある。広島の監督での好成績もプラスに働くだろう。今季から日本ハム二軍監督になった稲葉篤紀は、2020年から資格を得ているが、得票率は15~20%で低迷している。
27宮本慎也2133安打/票P184(52%)
29清原和博2122安打
30小笠原道大2120安打・M2回本1回点1回首2回安2回/票P22(6.2%)
32前田智徳2119安打/票P21(5.9%)
34中村紀洋2101安打・本1回点2回
宮本慎也は長くヤクルトで遊撃手、三塁手として活躍。打撃タイトルはなくベストナインは1回だがゴールデングラブ10回、2019年に資格を得たが得票率はほぼ50%を上回っている。ここ数年で殿堂入りするか。
清原和博は、打撃3部門のタイトルには無縁ながら歴代5位の525本塁打、6位の1530打点。本来なら殿堂入りすべき選手だが、2016年の覚醒剤取締法違反で逮捕、有罪判決を受けて2017年から殿堂入り候補を外れている。
小笠原道大の未選出に懸念を覚えるワケ
この5人のうち、筆者が懸念しているのが小笠原道大だ。
イチローと同世代でパ・リーグの最強打者として日本ハム時代の2006年にMVP。巨人に移った翌2007年にもMVPを獲得。リーグを跨いでの2年連続MVP獲得は小笠原しかいない。2021年に資格を得たが票が伸びず、今年は22票(6.2%)。なぜ、これほどまでの大選手の票が伸びないのか。
前田智徳は広島一筋。打撃の職人としてイチローと肝胆相照らす仲と言われた。タイトルを取っていないこともあるのか、彼の得票も伸び悩んでいる。小笠原と同じイチロー世代の中村紀洋も2020年に資格を得たが翌21年4票(1.1%)で資格を失った。