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後の日本チャンプが3人いても…高校駅伝2015年の学法石川“奇跡の世代”の敗因は「箱根の駒大」と同じだった?「僕らの練習は日本一だったけど…」 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph by(L)Takuya Sugiyama、(C)、(R)Satoshi Wada

posted2024/01/20 17:02

後の日本チャンプが3人いても…高校駅伝2015年の学法石川“奇跡の世代”の敗因は「箱根の駒大」と同じだった?「僕らの練習は日本一だったけど…」<Number Web> photograph by (L)Takuya Sugiyama、(C)、(R)Satoshi Wada

田母神(左)、阿部(右)ら有力選手を擁した学法石川“黄金世代”。松田監督(中)独自の育成法は、駅伝だけに向いていないものでもあった

 ただ、世羅に勝てなかったことは織り込み済みとしても、表彰台をも逃す「7位」という結果は、戦前の予想に比べれば明らかに悪いものだった。

 理由の1つにはピークのズレが考えられた。阿部の分析はこうだ。

「5000mで13分台を狙えるような、もっというと13分40秒台を出せるぐらいの超高強度の練習を都大路の1週間前にしていたんです。あの時は若さと勢いで、その練習をこなせて“いける”という雰囲気になっていました。ガクセキは徹底的にスピード重視のスタイルだったので。でも、今になって考えると、あれでピークアウトしてしまっていたのかな」

 調子を落としていた阿部は最後まで走りきれなかったという。だが、他の主力はきっちりとこなした。いや、こなせてしまった。阿部が言うように、確かに自信にはなったのかもしれないが、裏を返せば1週間早くピークが来ていたとも考えられた。

 また、監督の松田の方針もあり「スピード重視」を柱におくガクセキは、日ごろからほぼアスファルトを走らない。それは、駅伝という観点から見ればロードレースの経験不足とも言えた。田母神は言う。

「僕の場合、9月のしらかわ駅伝が一発目で、県駅伝、ふくしま駅伝(市町村対抗)とあり、その次が都大路でした。東北高校駅伝は、主力は走っていません。地域のロードレースにも出たことがないし、僕は春の伊那駅伝にも出場していません。

 大学で箱根駅伝を目指していて思ったのは、ロードとトラックは別物だということ。うちにはロードに得意意識を持っている選手があまりいなかった。『トラックを走れたらロードも走れるだろう』と考えていて、その意味では駅伝をちょっと甘く見ていたのかもしれません」

「駅伝に対する思いがちょっとなかったのかな」

 松田が打ち出したガクセキ独自のカラーは、駅伝では裏目に出たということなのかもしれない。松田本人もこう嘆息する。

「他の伝統校に比べたら、駅伝に対する思いというのがちょっとなかったのかな」

 もちろんこれだけのランナーが揃った以上、高校長距離界で最大の舞台となる“都大路優勝”という大きな目標に向かって、1年間取り組んできたのは事実だ。

【次ページ】 ガクセキと他の駅伝強豪校との「大きな違い」

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