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あの朝倉未来が泣いた…YA-MANの“衝撃KO勝利”は必然だったのか? 公開練習で記者が目にした“意気込みの差”「油断と重荷があった」
posted2023/11/24 17:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RISE CREATION
夢か、現実か。
試合から数日が経ったというのに、まだ目の前で起こったことをうまく整理できないでいる。“路上の伝説”と称され、ストリートファイトから格闘技界の中心人物に成り上がった男が、右ストレートでアゴを打ち抜かれて前のめりに倒れたのだ。11月19日、オープンフィンガーグローブによるキックボクシングに特化したイベント『FIGHT CLUB』で、YA-MANが朝倉未来をKOしたインパクトはそれだけ大きかった。
「1000万円は安い」と言い切った朝倉未来の“財力”
そもそも、この大一番が決定し「KOでなければ判定決着なし」というルールが発表されると、両者と“犬猿の仲”として知られる平本蓮からは「とんでもない茶番が見られる気がする」といった冷やかしの言葉も飛んでいた。しかし、YA-MANが朝倉からシリアスすぎるダウンを奪ったことで、そうしたネガティブな声は一気に吹き飛んだ。それは『FIGHT CLUB』が“血闘”という当初の目的を達成した瞬間でもあった。
格闘技最大の魅力は肩書や名声など一切関係なく、「その場で強い者が勝つ」というきわめてシンプルな現実を見せつける点にある。だからこそ、フィニッシュやダウンシーンに誰もが目を奪われる。最近では、11月4日にアゼルバイジャンで開催された『RIZIN LANDMARK 7』で、鈴木千裕がヴガール・ケラモフを下からの蹴り上げによる1ラウンド失神KOで下してRIZINフェザー級王座を奪取した一戦がそれに当たる。
知っての通り、朝倉はBreakingDownを成功に導くなど、いまやファイターというより実業家としての顔の方が目立つようになった“時代の寵児”だ。決戦前日、キックボクサーとしてのYA-MANのホームリングであるRISEで、YA-MANと朝倉未来の公開計量が行なわれたときのことだ。現在の朝倉の立場を如実に感じさせる場面に出くわした。
計量をクリアして朝倉とともにリング中央に並んだYA-MANは、この大会の配信局であるABEMAの了解をとりつけたうえで、「1分以内にKOしたら1000万円」というKOボーナスを朝倉に提示した。しかし、朝倉はつれない反応を示した。
「YA-MAN、ゴメン。俺にとって1000万円は安いわ。それくらいの金、簡単に稼げちゃうので。(モチベーションは)変わらないです」