格闘技PRESSBACK NUMBER
あの朝倉未来が泣いた…YA-MANの“衝撃KO勝利”は必然だったのか? 公開練習で記者が目にした“意気込みの差”「油断と重荷があった」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE CREATION
posted2023/11/24 17:01
YA-MANの連打を浴びて力なくリングに崩れ落ちた朝倉未来。11月19日の『FIGHT CLUB』で行われた注目の一戦は、わずか1分17秒で決着した
これだけ日本経済が閉塞している状況で、「1000万円くらい簡単に稼げる」と口にできるのは朝倉が実業家・YouTuberとして成功を収めているからにほかならない。ちなみにこの日の『RISE173』で開催されたスーパーフライ級のワンデートーナメントの優勝賞金は100万円。キックボクシングの世界ならば3桁の賞金を用意するだけでも高額だと思うが、その10倍の金額でも気持ちを動かされないとは……。いまだBreakingDownのやり方には賛否両論があるが、ケタ違いのマネーを生み出すシステムを構築したという点で、朝倉は別次元を生きるファイターだった。
「キックとMMAは野球とソフトボールくらい違う」
巷では「朝倉有利」という声が多かった。いくら前戦で朝倉がケラモフに一本負けを喫していようと、あるいは今回がキックボクシングの試合は初めてというシチュエーションを差し引いても、「YA-MANに負けることはない」というのが大方の予想だった。ストリートファイターとしての数々の武勇伝が、オープンフィンガーグローブマッチという試合スタイルと重なり合ったのだろうか。
筆者はこの勝敗予想を聞いたとき、故・山本“KID”徳郁が北京五輪出場を目指して古巣のレスリング界に復帰し、2007年1月に全日本選手権の男子フリースタイル60kg級に挑戦したときのことを思い出した。
当時のKIDはMMAファイターとして人気絶頂で、五輪への挑戦は大きな話題となった。しかも、周囲の記者の多くはMMAでの活躍を理由にKIDの優勝を予想していた。筆者は目が点になった。KIDの挑戦は素晴らしいことだと思ったが、MMAとレスリングはまったく異なる競技だ。競技からのブランクを鑑みれば、難しい挑戦であることは否めない。案の定、KIDは初戦こそ突破したが、続く2回戦で自衛隊の井上謙二の巻き投げによって右ヒジを脱臼し、フォール負けを喫した。
キックボクシングからプロとしての活動をスタートし、現在はMMAとの二刀流で奮闘するYA-MANは、キックとMMAは似て非なる競技であることを強調した。
「野球とソフトボールくらい違う。自分もキックである程度上までいってMMAを始めたとき、アマチュアの子にボコボコにされましたから」