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あの朝倉未来が泣いた…YA-MANの“衝撃KO勝利”は必然だったのか? 公開練習で記者が目にした“意気込みの差”「油断と重荷があった」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE CREATION
posted2023/11/24 17:01
YA-MANの連打を浴びて力なくリングに崩れ落ちた朝倉未来。11月19日の『FIGHT CLUB』で行われた注目の一戦は、わずか1分17秒で決着した
だが、深手を負った朝倉に逆襲する力は残っていなかった。パンチの連打で再びキャンバスに倒れ込むと、レフェリーは即座に試合をストップさせた。
「必ず戻ってきます」涙を浮かべて現役続行を宣言
朝倉の敗因を聞かれると、YA-MANは油断と重荷を挙げた。
「昔、一緒に俺と練習していたときの感触から『YA-MANならいける』と感じていたと思う。でも、その一方で俺に負けたら失うものが大きい。そういう重荷もあったんじゃないですかね。みんな(朝倉に)期待しすぎていたんじゃないですか」
その一方でYA-MANは「これで勝ったとは思っていない」と自分のフィールドであるキックのリングに上がってきてくれたことに敬意を示した。試合後の取材中も一貫して“さん付け”で呼んでいたところに、自分がMMAをやるきっかけを作ってくれた朝倉に対するリスペクトを感じた。
「リスクを背負って出てくれてありがとうございます。今度はMMAで、未来さんとやってみたい」
対する朝倉のダメージは深く、会場では「喋れる状態にはない」ということでノーコメントだったが、SNSとYouTubeを通じて引退を示唆した。しかし試合翌々日の11月21日、YouTubeに一本の動画をアップする。疲弊した心身を回復させるために「少し休ませてほしい」と引退ではなく休養を宣言した朝倉は、涙を浮かべながら視聴者にこう語りかけた。
「自分自身、こんな負け方で終わりたくない。誰よりも悔しいです、今回の負けは。血反吐吐くような練習をして、必ず皆さんの前で強い姿を見せたいと思っているんで。なので、その時まで……。すみません。絶対に強い姿を見せるので。それまでちょっと、待っていてください。必ず戻ってきます」
時代の寵児が味わった過去最大の痛みと屈辱。朝倉未来は、ふたたび格闘家としての輝きを取り戻すことができるのか。富を手にすることよりもはるかに難しく険しい、再起への旅が始まった。