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あの朝倉未来が泣いた…YA-MANの“衝撃KO勝利”は必然だったのか? 公開練習で記者が目にした“意気込みの差”「油断と重荷があった」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE CREATION
posted2023/11/24 17:01
YA-MANの連打を浴びて力なくリングに崩れ落ちた朝倉未来。11月19日の『FIGHT CLUB』で行われた注目の一戦は、わずか1分17秒で決着した
それだけではない。両者の公開練習を見る限り、決戦を控えるファイターとしての熱量に大きな差を感じた。11月9日、朝倉はともに軍団対抗戦に出場する西谷大成や白川陸斗と練習に臨み、いつものように「(YA-MANは)KO率、パンチ力、根性があると思いますが、怖さはないですね」と絶対的な自信をのぞかせた。ミット打ちでも朝倉は余裕を見せ、リラックスしたムードを漂わせていた。
対照的にYA-MANはその4日後に行なわれた公開練習でピリピリとした緊張感を全身から漂わせ、「明日試合をしてもいいですよ」と宣言するほど仕上がっていた。
選手の性格にもよるため、どちらがベストな状態なのかはわからない。ただ、今回の一戦に関していえば、公開練習時のピリピリムードを決戦のリングにそのまま持ち込んだYA-MANが朝倉を呑み込んでしまった気がしてならない。
YA-MANが「昔の朝倉未来を呼び戻した」瞬間
朝倉戦が決まってからというもの、YA-MANはキッチリと対策を立てていた。かつて朝倉とともに練習を行っていたYA-MANは、試合後の取材でこう語っている。
「未来さんは右フックを合わせるクセがある。こっちが外からフックを振ると、右フックを返してくるわけです。そのフックをガードしながら、右ストレートを打つという作戦を立てていました」
フックだけではない。時折ボディストレートを打ち込むなど、顔面以外にも攻撃の的を散らしていた。コーナーを背にした朝倉はフックとボディが来ることを警戒していたので、思い切りストレートをもらってしまったのではないか。
ダメージは大きく、朝倉は意識を飛ばされて前のめりに倒れ込んだ。YA-MANは、いや見ている誰もが「これで終わった」と思いかけたが、“朝倉未来”としての意地とプライドがそうさせたのか、カウントが進む中、朦朧としながら朝倉は立ち上がった。YA-MANは感心するしかなかった。
「すげぇと思いました」
この一戦が決まるや、YA-MANは「昔の朝倉未来を呼び戻したい」と再三口にしていた。そう、殺気に満ちた目で相手を睨みつけ、スターダムを駆け上がっていった朝倉未来を。立ち上がってきたときの朝倉の視線に、往年の彼を一瞬感じたのは筆者だけではあるまい。