「ケガをさせないことが一番です。もっと練習させれば、すぐに27分30秒、40秒くらいのタイムは出ますけどね」

　潜在能力を分かっているからこそ、脚を酷使させていない。レースも選手本人と相談しながら慎重に選んでいる。今季、出場したのは大学デビュー戦となった関東インカレを含めて3つのみ。

小指監督　©Yuki Suenaga

陸上はじめたての時に「疲労骨折」

　前田には苦い経験があるのだ。名門の報徳学園に入学したばかりの頃である。毎日、レベルの高い選手たちについていくために必死で食らいついた。すると、知らず知らずに自らの限界を超え、気づいたときには疲労骨折していたという。

「あのときは、しばらく走れませんでした。あれほどもったいない時間はなかった。他の選手ができることを自分ができないのは悔しいですが、ケガなく練習を続けるほうが絶対に力はつくと思います。焦らずに継続することが何よりも大事。高校の平山先生にも言われ続けてきたことです。いまもその考えは変わっていません」

マラソン大会も最下位を免れる程度、運動は苦手だった

　兵庫県の西宮で育った前田は、根っからの陸上エリートではない。本格的に競技に取り組んだのは、高校からである。小学校3年生までは運動が苦手で、マラソン大会でもぎりぎり最下位を免れる程度。眠っていた運動能力が引き出されたのは小学校4年生のとき。サッカーと水泳を始めると、自然と体力がつき、校内のマラソン大会で10位に。「もしかすると、長距離走が得意なのかもしれない」と初めて自覚し、6年生の頃には校内1位になっていた。地元の西宮市立深津中学校では陸上部に入るか少し悩んだものの、前田が選んだのはサッカー部。中学校の3年間は、無我夢中でボールを追いかけていた。

ポジションはセンターバック

「強いチームではなかったので、練習ではよく走っていました。そこでスタミナが培われたのかもしれません（笑）」

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