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「あれは留学生だよ…」箱根駅伝予選会、“1年生が日本人トップ”の衝撃…前田和摩(18)とは何者か?「中学までサッカー部」「じつは長距離が苦手だった」
posted2023/10/16 06:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
学生三大駅伝から久しく遠ざかっていた古豪のルーキーが今季、大きな衝撃を与えている。
10月14日に開催された100回の記念大会となる箱根駅伝の予選会。レース終盤に差し掛かる15km付近だった。フィニッシュまでの距離は残り7km弱。ゴール付近の昭和記念公園内に設置された大型モニター前に集まる大勢のギャラリーが一気にどよめいた。
一部の観客からは「あれは留学生だよ」
「ひとり出たぞ」、「どこの選手なの?」、「東農大だ!」
日本人2位集団から勢いよく飛び出したのは、ずっと脚を残していた東京農業大学1年生の前田和摩。本人が予定していたとおり、勝負どころからぐんぐんとペースアップ。日本人トップを独走していた中央学院大・吉田礼志(3年)の背中さえ見えれば、追い抜けると思っていたという。そして、20km手前付近。吉田を捉えると、並走することもなく、勢いそのまま突き進んだ。あっという間の逆転劇だった。抜かれた吉田は2023年FISUワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)のハーフマラソン(21.0975km)で4位に入賞した大学トップランナー。一部の観客からは「あれは留学生だよ」と感嘆の声が漏れ、拍手も起きていた。
(日本人トップは)無理な目標ではないな
最後はケニア人留学生までかわし、圧巻のロングスパートで有言実行の日本人1位(全体9位)となる1時間1分42秒でフィニッシュ。エースとしての役割を果たし、11位で予選を通過した東農大の10年ぶり70度目の出場に大きく貢献した。初めてのハーフマラソンとは思えないレース運びを見せた18歳は、落ち着いた表情で快走劇を振り返った。