野球のぼせもんBACK NUMBER
引退した松田宣浩のナゾ「酒席は1人カウンターで…」「試合後は声ガラガラ」ソフトバンク記者が見た“意外な素顔”「プライベートは寒男です」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/07 11:00
プロ野球18年間の現役生活に幕を下ろした松田宣浩
「大人になりすぎちゃダメなんです」
そんな両極端な彼をずっと見てきた。果たしてどちらが本当の松田なのか――。ただ、これだけは言える。少なくとも野球人・松田は「熱男」でいることを自ら選んでいた。ある日、こう語っていたことを思い出す。
「大人になりすぎちゃダメなんです。一番初めの少年野球の時代の気持ちを忘れちゃいけない。昔の野球界は若い選手が前に出て声を出して、ベテランや実績組はベンチの後ろにドカッと座るのが当たり前だったけど、そうじゃない。僕がホークスに入った頃の小久保(裕紀)さんや松中(信彦)さんは現役の最後まで声を出していた。尊敬する先輩を見習おうと思ってやっていたし、年齢を重ねる中で怖いのは肉体の衰えじゃなくて、気持ちの衰え。声を出していたら怪我なんてしませんよ。ためらうから怪我をする。発散するところがないから。バカになって、体と心の芯から活発なエネルギーを声という形で出さないと。きれいに、スマートにじゃない。やっぱりそこだと思うんです」
松田宣浩が教えてくれたこと
世間と同様、昨今の球界もテクノロジーの進化によって“便利”になっている。野球パフォーマンスの可視化や数値化が活用されるようになったことで特に投手は影響を大きく受け、その成果で150キロ台のストレートはもはや珍しくなくなった。そこに対応すべく打者のレベルもどんどん上がっていくだろう。野球のプレーの質そのものはこの先さらに向上していくに違いない。
ただ、こうも思う。データ化がいくら進もうとも、野球をするのは人間である。選手が発するエネルギーや活発な気持ちといった“アナログ”的なところが廃れることは今後もあり得ないはずだ。「熱男」の姿は、時代は移れど不変の真理を雄弁に語っていた。