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「国民が求めています。もっとやりましょう」カンボジアサッカーを変えた本田圭佑に足りなかったのは契約条件? それとも情熱? 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/08 17:02

「国民が求めています。もっとやりましょう」カンボジアサッカーを変えた本田圭佑に足りなかったのは契約条件? それとも情熱?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2018年8月12日、カンボジア代表のGMに就任し、同国サッカー協会のサオ・ソカ会長と会見に臨んだ本田。退任時の会見はなかった

——これだけ日本人がいながら連携があまりスムーズではない。そこはどう感じていますか?

斎藤 もったいないですよね。同じ言語を喋り、同じサッカーに触れてきた人たちがこれだけたくさんいて、ビジョンが一緒になったら結構いいのに……。たぶん構造の問題だと思います。バックグラウンドや来ている理由がそれぞれ違っていて、JFA派遣の人はアジア貢献として来ている。カンボジア協会の方が決定事項として突然就任を告げたのが本田さんで、私はまた違った立場で来ている。

——溝は埋まらなかった。

斎藤 私もこれはやばいなと思った。それで当時の在カンボジア日本大使にお願いすると、日本人の関係者を集めてパーティを開いてくれました。大使が会話の輪を広げて、パーティの後に同じホテルで日本人が初めて全員で会ったんです。いい雰囲気になって、本田さんがバティ(アカデミー)はいいですね、今度行きますよと言って数日後、本当に来ました。でもそこからまた本田さんは来なくなったので、関係が冷えてしまった。

本田体制が残したもの

——シーゲームスにこれだけ国として力を注ぎこんで、育成も犠牲にした(予算の削減)のに結果が得られず、大会後は本田もいなくなった。思い入れも強かっただけに、悲観的になりがちですか?

斎藤 外から言うのは簡単だけれども、内部ではそう簡単ではない。私も内部にいて、責任感を持ってやれることをするしかない。

 本田さんがいていいところもあったけど、早く代わっていた方が結果が出ていたかも知れないという反論もあります。でもこうなった以上はもう仕方がない。歴史的にも上下動は常にあって、日本もドーハの悲劇があったからJリーグも盛り上がって今の隆盛がある。自分がここにいるうちに、いかに上昇させるかに注力するしかない。日本人体制はどうなのか、育成はどうなのか、お金はちゃんと回っているのか。課題が見えてくれば……。

——解決策も自然と見つかる。

斎藤 弱いものには弱いなりの戦い方がありますよね。シーゲームスに関しては結果を残せなかったうえに、カンボジアらしさも失ったように見えた。それが近くで支えていた者としての一番の後悔です。

 ミャンマー戦は負けたらダメな試合で、残り10分で2対0とリードされていた。雄叫びをあげてでも「勝つぞ」というサッカーがあって、トライを繰り返してプレッシャーをかけていく。へたくそでも一生懸命に繋いで走りこんでというのがあれば次に繋がる。だけどそこが……。

——ちょっと淡白な印象でした。

斎藤 試合後に本田さんと話をしたら、結果を残せなかった自分の責任は認めていました。こういう体制は今後絶対に避けなければいけない。現場にいて現場をもっとよく知って、サッカーだけでなく国民性や個人の特徴にも精通した人でないと結果も出ない。

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