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森保ジャパンは6月シリーズで何を「発見」したのか? 大きな収穫は“大迫勇也の幻影”を感じさせなかったFW陣と「4-1-4-1という答え」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/06/22 17:14
ペルー戦でゴールを決めた前田大然と三笘薫。2試合で計10得点という結果以上に、森保ジャパンにとって収穫の多い6月シリーズとなった
守備の局面でどこまでできるのかは、よりシビアな状況のゲームで見定めていく必要がある。それでも、攻撃への関わりには及第点がつく。森保監督は「複数のポジションでより高いレベルのプレ―を発揮してほしい」と話しているが、マルチタスクを担える人材として貴重な戦力になっていくかもしれない。
「可変する4-1-4-1」というひとつの答え
カタールW杯後初の活動だった3月の2試合は、4-2-3-1を採用した。今回の2試合は、4-1-4-1を基本布陣とした。アンカーとふたりのインサイドハーフで中盤を構成するこのシステムは、カタールW杯アジア最終予選で主戦術となったものだ。4-3-3とも言えるシステムに再び取り組んだのは、先のW杯で明らかになった課題──世界のトップクラス相手にも主導権を握る時間を増やす、という狙いを持ったものだろう。
同時に、戦術的な柔軟性を担保することもできる。ペルー戦の前半は遠藤航をアンカーに配し、旗手怜央と鎌田大地がインサイドハーフに立ったが、旗手が遠藤と横並びになり、鎌田が立ち位置を変えることで4-2-3-1にも4-4-2にも可変していった。
カタールW杯では5-4-1に近い3-4-2-1の立ち位置を取り、守備を固めつつカウンターに勝機を見出したが、海外組の選手を中心に一人ひとりがプレー強度を高め、かつトランジションの意識を磨いている。そうした「個」の変化を背景として、4-1-4-1で世界のトップクラスに対抗できるかどうかを探るのは、2026年W杯へのプロセスでトライしていいだろう。ドイツと対戦する9月の活動は格好の機会で、その準備として今回の2試合で4-1-4-1に取り組んだと考えられる。
3月は未招集だった旗手が復帰したのは、4-1-4-1のインサイドハーフで起用するためだった。体調不良でエルサルバドル戦前に離脱した大型MFの川村も、インサイドハーフで試したい選手だったに違いない。
カタールW杯からおよそ半年で、多くの海外組がレベルアップを印象づけた。一人ひとりの選手が所属クラブで「個」を磨きつつ、代表では「個のつながり」を深めていくことが、チームをより高いレベルへ押し上げていく。森保監督にはより良い化学反応を起こせる組合せを見つけることが求められ、4-1-4-1はそのひとつの答えになる可能性を秘めている。
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