核心にシュートを!BACK NUMBER
“日本代表ミドルシュート苦手問題”は克服できる?「意外と近い」「最近は意識的に」実は名手・遠藤航と鎌田大地、伊藤洋輝の一撃がヒント
posted2023/06/22 17:03
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
「ミドルシュートの距離って“意外と近いな”と思うようになってきているんですよね」
この言葉の主は遠藤航である。彼の話はこう続く。
「ペナルティーエリアのすぐ外ならゴールから16mから20mくらい。『あまり力まずに打つ方が入るぞ!』ということに気がつけたというのが大きいと思いますね」
この言葉、日本サッカーの進化を握る鍵かもしれない。
森保監督も伊藤のゴールを称賛した
筆者がそう考えていたタイミングで迎えたペルー戦。南米の雄との試合で均衡をやぶったのは、左足のキックの精度と強度をあわせ持つ伊藤洋輝によるミドルシュートだった。
日本が長年苦手としており、森保一監督のもとでの大陸別の対戦成績で唯一、負け越しているのが南米勢だ。日本が苦手とするサッカーカルチャーを持つ相手にした試合で、勇気をもたらしたのが伊藤だった。
エルサルバドル戦と合わせて6月シリーズ2試合で10ゴールを奪った中で、森保監督は伊藤のミドルシュートについて、以下のように評価している。
「攻撃のバリエーションと、選手の持っている特長を活かせたと思います。基本的に左サイドでは(三笘)薫が起点になっていたところは相手がケアしてくるので、スペースができた。洋輝がオーバーラップを仕掛けるだけではなく、後ろから攻撃に絡んで、シュートを決めた。あのシーンは、彼の良さが活かせたと思います」
では、なぜミドルシュートが今後の鍵を握りそうなのか。ここから順を追って説明していこう。
データで気になる「日本代表のシュートレンジ」
近年の日本代表では1つ、気になるデータがある。
W杯カタール大会における日本代表戦、日本と対戦国のシュート平均飛距離の差がどれくらいあったのかご存知だろうか。
日本:16.1m/対戦国:20.9m/差:4.8m
日本のシュートレンジが5m近く短い傾向にあることがわかる。
〈W杯での日本はカウンターから得点を奪いにいくことが多かったため、ミドルシュートを放つ機会が少なかった。対して、日本が守備に回る時間が長かったから相手はミドルレンジからシュートを狙う機会が多かったのでは?〉
データには、こんな反論もあるだろう。その論が正しいのであれば、日本から見て大半が格的に同等かそれ以下であるアジアでの戦いで、日本のシュートレンジのほうが長くなるのではないか。それを踏まえて、カタールW杯アジア最終予選や2019年アジアカップのデータを見てほしい。