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「大勢の記者たちが一瞬で消えた…」立教大“まさかの”駅伝予選落ちで、私が見た残酷な現実…55年ぶり箱根駅伝から5カ月後の敗戦
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAsahi Shimbun
posted2023/06/21 17:23
6月17日の全日本大学駅伝関東地区選考会。1組、ラスト1周で先頭争いをする立教大3年の安藤圭佑(9番)
「みんなの思いを背負って走ってくれたことに感謝します。つらい結果になりましたけれども、自分のレースをもう一回振り返ってみてください。そうすれば、これから自分が取り組んでいかなければいけないことが分かると思います。改善点はみんなと個別にも話しますが、今日の結果については誰も悪くないです」
上野監督の「誰も悪くないです」という言葉に、学生への思いやりが感じられた。そしてこう続けた。
「私自身、まずは自分の責任をしっかり見つめ直していきたいと思ってます。改めて、細かいところから、もう少し自分を見つめ直そうと思ってます。この全日本の予選会、去年より順位は上がってます。それはプラスに捉えてください。もう、悔しい思いはしたくないです。学生スポーツなので、学生がしっかりまとめてやっていくことが大事かなと思います」
スタンドがどよめいた“衝撃の1年生”
今年の箱根駅伝、立教は55年ぶりの出場を果たし、卒業生は大いに盛り上がった。
総合結果は18位だったが、走った10人の内訳をみると、3年生が4人、2年生、1年生が3人ずつと全員が残ることもあり、さらなる飛躍が期待されていた。
しかし、今回の全日本の結果を見ると、決して油断できないことが分かる。箱根の予選会では、全日本にも出場する大東大、東海大、東京国際大、帝京大、国士舘大、そして失格がなければ出場していたであろう中央学院大などと“議席”を争うことになる。
さらに最大の注目となりそうなのが、今回5位で通過した東京農業大である。最終組で走り、日本人トップ、留学生を交えても全体で3位となった1年生の前田和摩の走りは、衝撃的だった。一時、前田が留学生の前に出た時にはスタンドがどよめいたのだ(トラックでの1年生の走りとしては、2008年の関東インカレで見た柏原竜二以来の衝撃だ)。
東農大の上位の選手たちのレース運びは、自重することのない小気味のいいもので、これから勢いづいてくるのは間違いないだろう。
厳しい結果を突きつけられた立教。
神妙な表情で上野監督の話を聞く学生たち。どこかから、予選会を突破した学校の歓声が聞こえてくる。時計の針はもうすぐ9時だ。最後に上野監督は、学生たちにこう言葉を掛けた。
「今日は本当にありがとう。おつかれさまでした」
輪は解けた。
誰も、言葉を発さない。敗戦のあとは、得てしてこういうものである。
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