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JリーグPRESSBACK NUMBER
森保監督に世界の名将、“オーケストラの指揮者”も講師に? 知られざるS級コーチ講習会のリアル「見るべきものが変わったというか…」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJFA/AFLO
posted2023/05/25 11:04
2018年、S級コーチの「リフレッシュ研修会」で講義を行う日本代表の森保一監督。ライセンス取得後も指導者たちは知識をアップデートしていく
「ここの出口はJリーグの監督ですから」
講習会のプログラムには、サッカー界はもちろん日本スポーツ界を牽引できるような存在になってほしい、との期待も反映されている。変わったところでは、スピーチライターやオーケストラの指揮者が、座学の講師に招かれている。
浮嶋氏は人選の意図をこう解説する。
「オーケストラの指揮者は、人種の壁を超え、色々な楽器を奏でる演奏家の才能を引き出し束ねて、ひとつの音楽として作り上げる。どう人をまとめて個性を発揮させるのか、そのために自分はどうあるべきか……などは、サッカーの監督と似ているところがありますよね」
Jリーグの4クラブで9シーズンの指導経験を積んできた北嶋秀朗さんは、自身の変化を実感している。S級コーチ養成講習会に参加する20人が忌憚のない意見をぶつけ合う時間が、思考に奥行きを生み出しているのだ。
「見るべきものが変わったというか、それまであまり気にしていなかったことが気になったりするようになりました。あえて見てなかったものもあるけれど、見たほうがいいなと感じたりもします。今回の講習会では自分を一度壊して、自分のなかにあるものを整理しながら学んでいきたいと思っているんです」
S級コーチ養成講習会では、“横のつながり”も生まれる。川崎Fの鬼木達監督と戸田光洋コーチは、2013年度のS級同期生だ。現役最後のシーズンをふたりのもとで過ごした中村さんは、「指導実践などを通してサッカー観をすり合わせていくことが、一緒に仕事をするきっかけになるんでしょうね」と話す。
「僕たちも、そんなふうになりたいですね。若い指導者がJリーグの現場へ入っていくことで、リーグの活性化につながる色々なムーブを起こせたら、と思っています。そのために、講習会では出し惜しみをしたくない。みんなに言ってもらえることで引き出しが増えていくし、ここの出口はJリーグの監督ですから」
自分自身で一つひとつの課題について考え、同期やチューターの意見に耳を傾け、また考えて、さらに意見を聞いて。20人の参加者によるハイレベルな切磋琢磨は、12月まで続いていく。
<前編から続く>
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