この年大洋ホエールズ監督に就任した三原は、前年最下位のチームをV字回復させ水原茂率いる巨人に4.5差をつけてリーグ優勝。水原茂はこの年限りで巨人監督を退任する。

　大洋は、大洋漁業が親会社。「クジラを一頭取れば球団運営できる」という野球好きのオーナーは、優勝をそれほど渇望しておらず、三原には「もうちょっとましな成績を」と希望していた。しかし三原は東京六大学のエリート選手を中心とした大洋ナインを奮起させ、初優勝に導いた。その見事な手腕は「三原マジック」と呼ばれた。

　さらに1967年近鉄バファローズの監督としても球団を立て直し、1970年からはヤクルトアトムズ監督になる。そして1973年には日本ハムファイターズの社長に就任する。

球団譲渡式の後、握手する大社義規日本ハム社長（左）と西村昭孝日拓社長。中央は三原脩新球団社長　©JIJI PRESS

選手を大人扱いした三原野球と栗山采配の系譜

　三原人脈からは、女婿の中西太、仰木彬、大沢啓二、若松勉をはじめとする多くの指導者が生まれた。彼らは巨人を中心とする「プロ野球本流」とは違う個性豊かなチーム作りをした。ヤクルト出身、日本ハムで采配をとった栗山英樹監督は、直接の関係こそないが――系譜に連なると言えよう。

　ひとことで言えば、三原野球は、選手を「大人扱い」してのびのびとプレーさせることが肝だった。三原の周りには様々な個性で「意識が高い」選手が集まり、切磋琢磨し、相乗効果を生んで大きな結果を得た。「三原マジック」とはせんじ詰めれば「三原の選手への信頼」から生まれたと言えよう。

©Naoya Sanuki

　今回の侍ジャパンも多士済々の選手たちが栗山英樹監督のもとに集まり、勝利のためにまとまり、相乗効果も相まって大きな栄冠を得た。その背景には選手を信じ切る栗山采配があった。

　4月26日、62歳の誕生日を迎えた栗山英樹監督は――正しく三原脩の正系に連なると言えるのではないか。

＜#1「巨人時代編」からつづく＞

（参考文献：「魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ」立石泰則著、「風雲録―西鉄ライオンズの栄光と終末」豊田泰光著、「西鉄ライオンズ―伝説の野武士球団」河村英文著、「鉄腕伝説 稲尾和久―西鉄ライオンズと昭和」、「三原メモ」三原脩著、「人づかいの魔術―私の野球人生から」三原脩著）

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