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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「ユースの三笘薫と田中碧に“今すぐプロを倒すつもりでやれ”と言ったら」風間八宏が知る“W杯川崎勢の10代”「今は14歳が分岐点です」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/04/16 11:01
板倉滉、三笘薫、田中碧。日本代表定着前、下部組織を含むフロンターレ時代の彼らについて、風間八宏氏はどう感じていたのだろうか
滉はスピードがそれほどなかったので、センターバックではなく、ボランチで起用しました。ボランチの経験が、今センターバックとしての余裕につながっていると思います。その点では(谷口)彰悟に似ていますね。彰悟も大学ではボランチでしたから。
一方、まだ突出した特徴がない選手たちは、試合に出ることを優先して大学へ行った方がいいと考えました。とは言っても大学に預けっぱなしにするのではなく、よくフロンターレの練習試合に呼んでいましたよ」
三笘と田中碧をトップの合宿や練習に呼んだ時に…
――三笘薫選手と田中碧選手は風間さんが監督のときにユースにいて、トップチームの合宿や練習に呼んでいたそうですね。彼らがここまでの選手になると想像していましたか?
「私はユースの合宿へも顔を出しました。そのときには『自分たちがプロの予備軍なんて思うなら、今すぐにサッカーをやめろ。今すぐにプロを倒すつもりでやれ』と伝えました。ユースは学校ではないですからね。
トップの合宿や練習に三笘や碧を呼んだときは、『ここはお前たちを伸ばすための場所ではない。ダメなら明日にでも返す』と言いました。
それでも碧が臆せず、私にボールの蹴り方を聞きにきたので、(中村)憲剛たちは驚いていました(笑)。なかなか肝が据わっていますよね。
三笘はトップへの昇格を誘ったんですが、『今トップに昇格しても試合に出られない。筑波大学へ行きたい』との回答でした。
個人的におもしろいと思ったのは、進学先を筑波大学一本に絞っていたこと。3つくらいの大学を天秤にかける選手が多いんですが、三笘は1つに決めていた。自分の考えがしっかりあるところが、プロ向きだと思いましたね。
スピードについては三好とはまた違った速さがあり、体を当てられてもすり抜けていくことができていた。『変わった身のこなしの選手だな』という印象でした」
セレッソで「とてつもない選手」を輩出するために
――今、風間さんがアカデミー技術委員長を務めるセレッソで似たムーブメントが起きています。北野颯太がU-20日本代表で10番を背負い、3月のU-18日本代表の練習試合で石渡ネルソンと清水大翔がボランチを組みました。
「セレッソでの私の役割は仕組みづくりと指導者の質の向上なので、選手を直接指導する機会は限られています。選手が育っているのは、指導者が力をつけてきてくれているおかげです。
セレッソのアカデミーとスクールでは、すべての力を『とてつもない選手の輩出』に注いでいます。ユースの重要な試合があっても平気でトップの練習に参加させるし、女子チームの練習に1人で行かせることもあります。
ジュニアユースの選手の中には、『このままユースでずっとやらせてください』という選手もいるくらいですよ。
誰にでも機会を与えるのではなく、本気で突き抜けたいと思う選手に機会を与える。これが今のセレッソにおける平等です」