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「感じねえんだよ、気持ちをよ!」鈴木優磨が鹿島サポーターの罵声を浴びて…“ホームで5失点惨敗”カメラマンが目にした名門の苦悩
posted2023/04/19 17:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
4月15日、雨のカシマサッカースタジアム。試合を終えた選手たちがサポーターへの挨拶を終えると、鹿島アントラーズの鈴木優磨は1人その場に留まった。
観客席からごったになって飛んでくる罵声と激励を一身に浴びた彼は、看板を越え、サポーターに近寄り、拡声器を握った。
「俺らも100%やってるよ。たしかにわかる。結果が出てないのはわかる。俺らが全部悪いよ。でもここから、まだ巻き返せるチャンスが俺らにはある」
拍手が起こる前に、怒気を含んだ辛辣な声が返ってきた。
「ねーよ!」
鈴木は言葉を止めなかった。
「まだある。絶対ある」
「ねーよ!」
「3連覇したときも負け続けた。最後に勝つ」
「気持ち感じねえんだよ、気持ちをよ! おめえらじゃよ!」
雨は降り続いていた。カメラマンとしてこのスタジアムで多くの試合を撮影してきたが、こんなに悲しい光景を目にしたことはなかった。
「勝つしかない試合」で強さを見せてきた鹿島だが…
4月1日、鹿島はホームでサンフレッチェ広島に敗戦。試合終了まであと少しという時間帯で立て続けにゴールを奪われ、昨年8月から続いているホーム未勝利の流れを止めることができなかった。すると、サポーターはスタジアムを出るチームバスを囲んだ。
その次の試合は9日、アウェイでの柏レイソル戦。柏は昨年8月からホームだけでなく公式戦未勝利が続いており、サポーターの我慢が限界に達しているチーム同士の対戦となった。試合は柏が細谷真大のゴールで先制し、そのまま1-0で勝利。試合後、鹿島サポーターはゴール裏に居残った。
そして15日、鹿島はホームにヴィッセル神戸を迎えた。勝利以外許されない状況での試合となったが、神戸は前節を終えた時点で首位。順位表を鵜呑みにすれば、もっとも手ごわい対戦相手だった。
しかし個人的には、「強い相手に勝つしかない」という状況は、かえって鹿島に有利に働くのではないかという思いがあった。先の鈴木の言葉にあったような、「最後には勝つ」という鹿島のイメージは今でも強くあった。
ところが、試合が始まると順位表が示す通りのサッカーが繰り広げられた。神戸は齊藤未月と山口蛍が抜群のポジショニングと運動量でチームを支え、共にドリブルを得意とする汰木康也と井出遥也が近い位置で補完し合い、酒井高徳と初瀬亮の両サイドバックはどんどん前に出てくる。チーム全体の球離れもいい。シンプルかつ無理のない、それでいて効果的な試合運びで徐々に優位に立つと、24分にコーナーキックから大迫勇也がゴールを決めてスコアを動かした。