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「熱い、熱い試合をやろうぜ」武藤敬司が内藤哲也を引退試合の相手に指名したワケ…狙うは「ムタvs.中邑」超え、11年前の因縁も
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原悦生Essei Hara
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posted2023/01/27 17:00
![「熱い、熱い試合をやろうぜ」武藤敬司が内藤哲也を引退試合の相手に指名したワケ…狙うは「ムタvs.中邑」超え、11年前の因縁も<Number Web> photograph by Essei Hara](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/0/7/700/img_075267834287beed93face8e27aea780374626.jpg)
2012年1月4日の東京ドーム、内藤哲也にシャイニング・ウィザードを連発した武藤敬司。内藤は11年前のこの一戦を「完封負け」と振り返った
「へし折るぞ」武藤の4の字固めに苦悶した11年前
内藤は時計の針を正しく進めようと、武藤に挑んだ。勝つことができれば、時代をつかむことができた。だが、武藤という壁の大きさ、重さが内藤にのしかかった。何度ドラゴン・スクリューを浴びたことか。それに4の字固めの足殺しが追い打ちをかけてきた。武藤の「へし折るぞ」という声に苦悶した。シャイニング・ウィザードを何発も食らった。そして、ムーンサルトプレスでとどめを刺された。22分35秒。完敗と言ってもいい試合だった。
試合を終えた内藤は涙目だったが、こんなことを言っていた。
「お客さんはまだ武藤を見たいんだな……。悔しかった。今度やったら、おいしいところは持っていかせない。昔よりウェイトアップしている分、威圧感はすごかったですね。ただ、最初のレスリングでは負けていなかったでしょう。幻想、武藤がすごいというのは幻想だよ。でも、それを幻想だって証明できなかった」
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これに対して、武藤は余裕のコメントを残している。
「オレのことを好いてプロレスラーになったとかで、正直嬉しいですよ。レスラー冥利に尽きるというのはあるけど、彼にはもっと成長してもらって、今度は内藤に憧れてプロレスを目指す若い奴が増えてくれたら、なんとなく戦い甲斐があったというかな。天才? 何をもってそう言うのかはわからないけれど、それは感じなかったですね。彼も努力の人であって、組み合って練習しているなっていうのは感じましたよ。思った以上に力もあったし。試合やる前は『ヘビー級より力ねえんじゃねえか』とこき下ろしたけど、あらためて戦ってそこは訂正しますよ。力強かったですよ」
内藤は武藤のコピーだ、という見方についても言及した。
「オレのコピーという感じはしなかったですね。コピーしていたら、アイツは止まっちゃう。だから、最後にエールを送るつもりで握手しようとしたら、ムカついたんだろうな。拒否されたからな。いいんじゃないの」