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タイトルマッチは“朱里との作品”だった…新王者・ジュリアはスターダムをどう“引っかき回す”のか? 異例のアピール「全員覚悟しとけよ!」
posted2023/01/31 18:28
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
スターダムの2022年ベストバウトは、年間最終大会のメインイベントで生まれた。12月29日の両国国技館大会。団体の頂点である“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダム王座をかけての大一番だ。
チャンピオン・朱里は東京スポーツ認定の女子プロレス大賞を受賞。盤石とも言える闘いぶりで1年間、ベルトを守ってきた。挑戦者はジュリア。夏のリーグ戦「5★STAR GP」で優勝し、挑戦権を得た。
タイトルマッチは“朱里とジュリアの作品”だった
朱里はもともと、ジュリアのユニット「Donna Del Mondo(DDM)」のメンバーとしてスターダムに参戦してきたという経緯がある。スターダムのリングに朱里が上がると聞いて、ジュリアが誘ったのだ。2人でタッグベルトも巻いた。赤いベルトを獲得した朱里が自身のユニット「God's Eye」を結成して道が分かれたが、お互いの実力を認め合う関係だ。
「この相手にならここまでやれる」と認め合い、信頼しているからこそ、攻防が激しくなるのがプロレスというものだ。朱里もジュリアも、まったく遠慮がなかった。ロープにもつれ、体勢が逆さまになりながら顔面を殴り合う。場外では、ジュリアが花道から客席への投げを見舞った。
3カウントが入るその瞬間まで、どちらが勝つか分からない展開だった。30分一本勝負で、フィニッシュのタイムは29分51秒。あらゆる意味でギリギリの勝負を制したのはジュリアだった。決め技は初披露のバーミリオン。相手の手首をクラッチした上で放つノーザンライト・ボムだ。ジュリアはこの技を「最終奥義」だとSNSで明かした。
今年に入り、この試合はスターダムの年間表彰でベストマッチ賞を受賞。勝者も敗者も涙を流した。プロレスの試合は闘いであると同時に、レスラー同士が観客に向けて作る“作品”という面もある。12月29日のタイトルマッチは、ジュリアと朱里だから作ることができたもの。ジュリアは、朱里とだからこの賞が取りたかったという。